中国の電子商取引(EC)最大手の阿里巴巴集団(アリババ)は11月18日、2021年7~9月期の決算を発表した。売上高は2006億9000万元(約3兆5898億円)と前年同期比29%増加したが、2020年10~12月期から連結対象となったスーパーマーケット大手の高鑫零售(サン・アート・リテール)を除外すると、伸び率は16%にとどまった。これはアリババが2014年にアメリカのニューヨーク証券取引所に上場して以降、最も低い売上高の成長率である。
利益面も精彩に欠ける。7~9月期のアメリカ会計基準(GAAP)ベースの純利益は33億7700万元(約604億円)と、前年同期の7分の1以下に減少。投資先企業の評価額修正などの一時損益を除外した非GAAPベースで見ても、純利益は285億2400万元(約5102億円)と同39%減少した。
この業績が開示されると、アリババの株価は急落。11月18日の取引は前日の終値の9%安で寄り付き、終値は同11%安の143.6ドル(約1万6397円)で引けた。
アリババの成長鈍化の原因は、主力のEC事業を取り巻く経営環境の悪化と競争激化にある。「市場全体を俯瞰すると、個人消費の拡大の勢いが落ち続けており、それが国内リテール事業のパフォーマンスに影響を与えた。なかでも衣料品やアクセサリーの伸び悩みが目立った」。アリババCEO(最高経営責任者)の張勇氏は、決算説明会でそう説明した。
成長鈍化は長期化するおそれも
7~9月期の決算発表と同時に、アリババは通期の業績見通しも下方修正した。5月に発表した2021年3月期(訳注:アリババの会計年度は4月~翌年3月)の年次決算報告では、2022年3月期の予想売上高を前年度比29.65%増の9300億元(約16兆6350億円)としていた。しかし今回、売上高の予想成長率を20~23%に引き下げた。
「売上高の成長鈍化は、実物商品のEC市場全体が伸び悩んでいるためだ。アリババはこの市場における最大のプレーヤーだけに、受ける影響も大きい」。CFO(最高財務責任者)の武衛氏はそう語り、成長鈍化は今後も複数の四半期にわたって続く可能性があると示唆した。
中国国内のEC事業の伸び悩みが鮮明になるなか、アリババは新たな市場開拓を急ぐ必要に迫られている。経営陣は決算説明会で、品揃えを低価格商品に絞ったECアプリ「淘宝(タオバオ)特価版」、ネット出前や生鮮食品のスピード宅配などの生活関連サービス、クラウドコンピューティング、2016年に買収した東南アジアのEC大手「ラザダ」などの戦略事業に注力していくと強調した。
(財新記者:原瑞陽)
※原文の配信は11月19日
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