デキる人がこっそり使う「心に響く話し方」3技術 データもロジックも「これ」がなければ効果半減
私を「心の底から」奮い立たせた上司のスピーチ
「私の母親は貧しいお手伝いさんでした」
本社から来日した副社長は、日本支社のメンバーに向けたスピーチでそう語り始めました。私が外資系の航空会社に勤めていたころの話です。震災の翌年で、日本市場はまだ旅行需要の落ち込みから抜け出せないでいました。その対策を議論すべく日本を訪れたのです。副社長は続けます。
「私が子どものころ、特にうちのような貧しい家庭には、海外旅行など夢のまた夢でした。母親は、世界の美しい景色を集めた写真集を持っていて、それをいつも大事に眺めていました。そんな母親にとって、まさに見果てぬ夢だったのが、日本を訪れることでした」
「日本には春になると満開になる桜という花がある。4月のたった1週間の間だけ、日本中に広がるこの魔法のような光景を、一度でいいから実際に見てみたい。そんな母親の夢を、私はついに叶えてあげることができませんでした。しかし今、私は日本にいて、少し枯れかけた、それでもなお魔法のように美しい桜を窓の外に眺めています」
みんなが副社長の視線の先を見やります。
「ここは母親の夢の国です。だから私にとっても夢の国。それは何度訪れても変わりません。だから、そんな私にとって特別な日本を、再び若者のように元気に(rejuvenate)したい。どうすればいいか、みんなの知恵を貸してくれませんか」
この話を聞いて、私は大いに奮起しました。
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