いじめそのものは30年以上前で、それを告白したのも20年以上前のこと。このように、これまでの功績を否定するかのように、過去の言動を糾弾し、その対象を排除しようとする「キャンセルカルチャー」なる動きが、アメリカを中心に広がっています。
SNSの普及で誰もが「排除活動」に参加しやすくなった
例えば、今年3月には、アメリカの雑誌『ティーンボーグ』の編集長に就任予定だった27歳の女性ジャーナリストが、17歳のときに差別的なツイートをしていたことが発覚し、辞退を余儀なくされる事態となりました。
昨年7月には、航空機製造会社のボーイングの役員が30年前に雑誌で、女性が戦闘機のパイロットになることに反対する記事を書いていたことがわかり、辞任をしました。
最近、アメリカのセレブ業界で、話題になっているのが、モデルで有名歌手ジョン・レジェンドの妻である、クリッシー・ティーゲン。
彼女は、SNSで政治問題などにも声を上げるなど、影響力の強い「インフルエンサー」として注目されてきましたが、過去のツイッターでほかのセレブリティーに対し、「いじめのような陰湿な発言」をしていたことが問題となり、非難の的となっています。
何十年も前に出版されたアメリカの国民的童話作家の作品の中に黒人やアジア人の差別的な表現があったと、出版停止になったほか、南北戦争で南部連合の軍司令官を務めたリー将軍の記念像が姿を消すなどの動きには、賛否両論が噴出し、かんかんがくがくの議論となっています。
「キャンセルカルチャー」の定義はあいまいですが、過去の案件だけではなく、「セレブリティーや有名人の直近の不適切な行動を糾弾すること」もその一形態となっており、日々、誰かがその標的となっているのです。
この広がりには、価値観の多様化や、ハラスメントなどに対する意識の高まりで、「これまで問題にならなかったことが、非難されやすくなっていること」に加えて、SNSの普及で、過去を含めた言動が可視化されやすくなり、「ハッシュタグやリツイート、シェアなどを通じて、誰もが、その『排除活動』に参加しやすくなっていること」が背景にあります。
「コロナ危機」や「貧富の拡大」などで、世の中に怒りが充満し、その沸点が下がっていることも影響しているでしょう。
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