《プロに聞く!人事労務Q&A》余剰人員に対して退職勧奨はできますか?
回答者:石澤経営労務管理事務所 石澤清貴
従業員を転籍させるには、労働契約、就業規則、労働協約で転籍規定が定められており、それについて従業員の包括的な同意があったと見なされる場合であっても、対象従業員の個別的な同意がないかぎりできません(民法第625条第1項)。特に、転籍によって労働条件が低下するようであれば、従業員の同意を得ることは難しく、こうした場合には転籍に伴う不利益の代替措置を講じることも必要となるでしょう。また、転籍を拒否したことを理由として解雇することはできません。
では、余剰となった従業員に対して退職職勧奨ができるかということですが、退職勧奨とは、会社が従業員に対して、その自発的な辞職を促すための説得行為と考えられます。しかし、退職勧奨を受けた従業員が、それに合意して退職するかどうかは従業員の意思によるもので、その勧奨に応じて退職する義務を負うものではありません。
退職勧奨を行う場合には、勧奨の回数が多数、かつ、長時間にわたったり、いじめ的な言動により不当な心理的圧力を加えたと認められる場合には、退職強要となり違法性を帯びることとなります。その結果、仮に、従業員が退職届を提出したとしても、それは無効となり、退職としての法律効果は発生しないばかりか、従業員はそれにより被った精神的・経済的損害の損害賠償や慰謝料を会社に対して請求できることになります。