パリのデモなのに、浮世絵風
最後は木版画を1点紹介しよう。世紀末のパリで、警官に追いかけられて逃げるデモ隊の姿をコミカルに描いている。
ヴァロットンは若い頃から政治や社会に関心を持ち、風刺を込めた作品を描いている。
「自分がデモに参加するわけではありませんが、描くことで主張していました。反体制派で、戦争も取り上げています。スイスのローザンヌで生まれ、プロテスタントの国で育っているので、当時のパリの風俗、歓楽的な文化を、一歩引いて客観的に見つめています」
人口の少ない街からパリに出てきた彼の目には、近代都市の象徴である群衆が新鮮なものに映ったのだという。
白と黒の画面は、マンガを思わせる。
「木版画の技法はヨーロッパでは廃れていましたが、日本の浮世絵の大展覧会が開かれ、それに影響を受けてヴァロットンも挑戦しました。白黒だけで仕上げたものは当時としては斬新で、ほかの作家にはない特徴です」
展覧会では、裸婦像、室内画、風景画、戦争をテーマにした作品など、油彩画約60点と版画約60点が展示され、ヴァロットンの奇妙な世界を味わうことができる。おかしなところに気づいたり、いろいろなことを連想したりして、人とおしゃべりしたくなる展覧会だ。
2014年6月14日~9月23日
東京都千代田区丸の内2-6-2
TEL03-5777-8600(ハローダイヤル)
月曜休み(祝日と9月22日は開館)
一般1600円、高校・大学生1000円、小・中学生500円
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