しかし、こうした面白い絵を描く人が、なぜ忘れられてしまったのだろうか。ヴァロットンは神秘的で装飾的な作風の「ナビ派」のひとりとして活動したが、「彼の斬新な画風はナビ派の枠に収まり切れませんでした。どのグループにも位置づけられない、個性的な画家だったゆえに、美術史からこぼれ落ちてしまったのです」
足が見えないワルツ
何組もの男女が踊る『ワルツ』も個性が光る作品だ。右手前の女性の顔にピントが合わせられ、後ろの人々はぼけている。
「この時代の画家は自分で写真を撮り、それを見て描くこともありました。写真の影響がほぼ確実にある作品だと思います。点描で空気感を表現している部分がとてもきれいなので、ぜひ実物を見てほしいですね」
動きを出すためなのか、カップルには足がない。この絵を見た人々はあまりの奇抜さに驚き、受け入れなかったが、ナビ派からは評価され、ヴァロットンが彼らに認められるきっかけとなった。
トピックボードAD
有料会員限定記事
ライフの人気記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら