どこか奇妙…心をざわつかせる絵画たち 美術史からこぼれおちた画家、ヴァロットンの魅力

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しかし、こうした面白い絵を描く人が、なぜ忘れられてしまったのだろうか。ヴァロットンは神秘的で装飾的な作風の「ナビ派」のひとりとして活動したが、「彼の斬新な画風はナビ派の枠に収まり切れませんでした。どのグループにも位置づけられない、個性的な画家だったゆえに、美術史からこぼれ落ちてしまったのです」

足が見えないワルツ

フェリックス・ヴァロットン『ワルツ』1893年、油彩/カンヴァス、61×50 cm、ル・アーヴル、アンドレ・マルロー美術館蔵

 何組もの男女が踊る『ワルツ』も個性が光る作品だ。右手前の女性の顔にピントが合わせられ、後ろの人々はぼけている。

「この時代の画家は自分で写真を撮り、それを見て描くこともありました。写真の影響がほぼ確実にある作品だと思います。点描で空気感を表現している部分がとてもきれいなので、ぜひ実物を見てほしいですね」

動きを出すためなのか、カップルには足がない。この絵を見た人々はあまりの奇抜さに驚き、受け入れなかったが、ナビ派からは評価され、ヴァロットンが彼らに認められるきっかけとなった。

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