どこか奇妙…心をざわつかせる絵画たち 美術史からこぼれおちた画家、ヴァロットンの魅力

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浮き上がる、人間関係の煩わしさ

杉山さんは、現代的なテーマを取り上げるのもヴァロットンの特徴だと言う。『夕食、ランプの光』は、どこの家族にも隠されている、人間関係の難しさ、わずらわしさをうかがわせる作品だ。

彼は34歳のとき、それまで交際していた労働者階級の若い女性と別れ、2歳年上の裕福な画商の娘と結婚した。しかし、妻の親族になじめなかった。

フェリックス・ヴァロットン『夕食、ランプの光』1899年、油彩/板に貼り付けた厚紙、57×89.5 cm、パリ、オルセー美術館蔵 Paris, musée d’Orsay

後姿のシルエットは画家自身。妻とその連れ子と食卓を囲んでいる。

「妻も2人の連れ子も、ヴァロットンに無関心です。正面の女の子は、かわいいというより怖い。私たちのほうに視線を向けているようにも、冷静に状況を観察しているようにも見えます。子供嫌いの彼は、特にこの女の子とうまくいきませんでした。結婚した年の作品なのに、こんなに暗い。右側のフォークが異常に大きいのも怖いですね。新しくできた家族との複雑な関係が表れています」

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