バイデン政権「経済安全保障の時代」を読み解く

東大・佐橋亮准教授が語る米中対立の最新事情

台湾に生産が集中する半導体を筆頭にハイテク分野の研究開発や国産化へ巨額の財政支出を目指すバイデン大統領(写真:ブルームバーグ)
アメリカ議会上院は6月8日、中国と対抗するため、半導体やAI(人工知能)などのハイテクに巨額の補助金を投入する法案を超党派で可決。日本でも経済産業省が4日、中国リスクなどを念頭に国の関与を強める「経済産業政策の新機軸」構想を打ち出した。
発足から4カ月強が経過し、「経済安全保障」を前面に出す姿勢がはっきりしてきたバイデン政権の中国戦略。これをどう読み解けばいいのか。米中問題に詳しい東京大学東洋文化研究所佐橋亮准教授に話を聞いた。(インタビューは6月4日実施)

――経済安全保障にからむニュースが国内外で増えています。4日には、日本の経済産業省はポストコロナに向けた「経済産業政策の新機軸」という構想を打ち上げましたが、半導体など経済安全保障分野での財政支出案が1つの柱になっています。

世界の半導体生産が集中する台湾の地政学的リスクが強く意識されるようになった。台湾にとって半導体生産は一種の保険だが、アメリカや日本から見れば、この脆弱なサプライチェーン構造を変える必要が出てきた。

アメリカは、半導体の国産化や世界最大の台湾積体電路製造(TSMC)の工場誘致を進めている。日本の経産省も同じことをしたいのだろう。ただ、半導体開発や製造の基盤が弱体化した日本では半導体の全面的な国産化は難しい。こうした取り組みは「経済安全保障なのか、単に企業に補助金を出す産業政策なのか」が曖昧だが、アメリカも中国も同じ方向に走り出した感がある。

中国のメモリー半導体企業も禁輸先リスト入り?

――技術漏洩防止や貿易、投資の管理といったメインの経済安全保障分野では、アメリカは次にどんな手を打ち出すのでしょうか。

アメリカ商務省は昨年末、事実上の禁輸先リストである「エンティティリスト」に中国最大の半導体メーカー・中芯国際集成電路製造(SMIC)などを追加し、それ以外にもさまざまな枠組みで中国企業との貿易や資本関係を整理しようとしている。今後も裾野が広がり、たとえば長江メモリーテクノロジーズ(YMTC)などを擁する清華紫光集団が入ってくる可能性がある。

規制を司るアメリカ商務省産業安全保障局(BIS)のトップ(商務次官)はバイデン政権下でいまだ空席になっている。ここに座る最右翼として挙げられているのは、中国人民解放軍とそのテクノロジーの専門家であるジェームズ・マルベノン氏だ。彼は『中国の産業スパイ網』という著書(共著)を持ち、SMICのエンティティリスト入りでも極めて大きな影響を与えたリポートを書いた。マルベノン氏はメモリー半導体をリストに加えるべきと言っているようだ。

いずれにしろ、彼でなくても、アメリカの経済安全保障をさらに強化して中国のデカップリングの範囲を広げたいという人は大勢いる。

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