バイデン政権「経済安全保障の時代」を読み解く 東大・佐橋亮准教授が語る米中対立の最新事情
こうした世界観をきっちり打ち出したうえで、3月以降、バイデン政権は日米と米韓の安全保障協議委員会(2+2)、アラスカ州での米中外交トップ会談、そして日米首脳会談をこなしてきた。日米首脳会談は、バイデン政権の対中外交の初動における総決算だったと思う。
――日米首脳会談からは何を読み解きましたか。
共同声明や付属文書を見ると、伝統的な安全保障とともに、経済安全保障が並び立ち、2本柱になった。これは今までになかったことだ。台湾や新疆ウイグル自治区の人権問題に触れたことも画期的だったが、経済安全保障はそれ以上に非常に長く細かく書かれている。安全な次世代通信網、サプライチェーンの再構築、研究における外国政府の影響排除、量子科学における協力などだ。経済安全保障が急速に日本政治のアジェンダになったのは当然だろう。
トランプ後は、アメリカが動けば欧州も動く
――欧州やASEAN(東南アジア諸国連合)はトランプ大統領時代にアメリカへの信頼を大きく低下させました。バイデン政権になってからは変化したのでしょうか。
欧州が拒否したのは、自分たちをアメリカに従属させるようなトランプ的なやり方であって、バイデン政権のリーダーシップの取り方はもちろん歓迎されている。
具体的には、欧州のインド太平洋戦略が明らかに本格化してきた。EU(欧州連合)、英国、カナダはウイグル問題での中国政府高官制裁で同一歩調を取り、フランス軍は九州で初めて日米仏共同軍事訓練を行った。ドイツのフリゲート艦や英国の航空母艦が日本や太平洋に派遣される動きも今後予定されている。
EUや英国にとっては、人権問題の重要性に加え、NATO(北大西洋条約機構)同盟国として欧州における安全保障以外でもアメリカの世界戦略における重要課題に協調姿勢を示すことが大事だとの認識がある。今ではアメリカが動けば欧州も動くという状況になっている。
一方、ASEANは、中国との距離感が近く、内部にミャンマー問題も抱え、バイデン政権になってもアメリカへの態度を変えていない。
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