名古屋「きしめん」が絶滅の危機に瀕しているワケ 味噌煮込みうどんにご当地料理の座を奪われた
5月12日、名古屋市千種区にあるショッピングモール、星が丘テラス THE KITCHEN内に麺類専門店「星が丘製麺所」がオープンした。店を手がけるのは、ミシュランガイド愛知・岐阜・三重2019特別版にも掲載された名古屋・築地口「手打うどん 高砂」の店主、堀江高広さん。そして、「うどん酒場」という新たなジャンルを築き、予約の取れない人気店へと育て上げた名古屋・今池「うどんや 太門」の店主、衣笠太門さん。そんな2人がタッグを組んだのは、「きしめんを、本当においしい名古屋のソウルフードへ」という真摯な思いからだった。
きしめんの人気が凋落した原因
きしめんは、味噌かつや手羽先、ひつまぶしなど、いわゆる「名古屋めし」と呼ばれる料理の中でもっとも歴史がある。雉(きじ)肉入りの雉麺や紀州藩から献上された紀州麺、平たく延ばした生地を竹筒で碁石の形に抜いた棊子麺(けしめん)など発祥は諸説あり、江戸時代から食されていた。そんなきしめんが今、絶滅の危機に瀕しているのだ。
「僕が子どもの頃、きしめんは身近な食べ物でした。が、今は観光や仕事で名古屋へ来られた方しか注文されません」と、堀江さん。
一方、兵庫県出身で学生時代に食べた讃岐うどんに魅せられて、香川や東京で修業した経験がある衣笠さんは、「東京や大阪のように立ち食いのうどんやそばの店が名古屋にはないんですよね。こんなにおいしいきしめんがあるのにそれが不思議でした」と、語った。
実際、名古屋にはきしめんの専門店がほとんどなく、麺類食堂が数あるメニューの1つとしてきしめんを提供しているのが現状だ。しかし、店主の高齢化や後継者不足で閉店するケースも少なくはない。また、多くの店は高齢の常連客に支えられており、若い世代からすれば何となく入りにくい雰囲気もある。
2000年代初頭に味噌かつや手羽先、ひつまぶしなど名古屋の食べ物の総称として「名古屋めし」というコトバが生まれ、名古屋観光における起爆剤となった。にもかかわらず、きしめんの人気が凋落したのはなぜか。皮肉なことに同じ名古屋めしである味噌煮込みうどんにソウルフードの座を奪われたのである。
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