名古屋「きしめん」が絶滅の危機に瀕しているワケ 味噌煮込みうどんにご当地料理の座を奪われた

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現在、開発中の中華麺ときしめんを組み合わせた「ラッキー」(筆者撮影)

“ミックス”でおすすめは、中華麺(ラーメン)ときしめんを組み合わせた、その名も「ラッキー」。それぞれ別々に食べたくなる気持ちを抑えて、是非中華麺ときしめんを同時に食べてみてほしい。きしめんのもっちり感とコシのある中華麺の食感が同時に堪能することができる。

現在、新型コロナ感染症緊急事態宣言の発出中につき、メニューは昼夜共通。感染拡大が落ち着いたら夜はお酒を楽しんだ後、きしめんなどの麺類で締めくくる「麺類酒場」としても営業するという。お酒のセレクトとおつまみのレシピ開発は、名古屋に「うどん酒場」というジャンルを確立した衣笠さんが担当する。

「定番の天ぷらや名古屋ならではの味噌おでん、味噌串かつなど地元で昔から親しまれているものを用意しています。グルメな店ではなく、気軽に足を運んでもらえる店をめざしています」(衣笠さん)

きしめん人気復活のカギを握る「クラフト麺」

おいしいきしめんを地元のみならず、全国に広めるには、新型コロナの影響もあり、イートインだけではまだまだ足りない。冷凍麺にこだわったのは、テイクアウトや通販にも力を入れていくためだ。店の入り口の横には冷蔵のショーケースが並び、冷凍麺と冷凍のつゆも販売している。「星が丘製麺所」で扱う麺を堀江さんと衣笠さんは、“クラフト麺”と呼んでいる。クラフトビールやクラフトジンと同様に、職人が作った麺という意味だ。

テイクアウト用の冷凍きしめん(250円)と味噌つゆ(300円)。たまり醤油ベースの赤つゆと白醤油を使った白つゆは各250円(筆者撮影)

「お土産やご贈答のほか、業販も視野に入れています。ウチの麺のみならず、レシピを伝えてくだされば、その店と同じ麺を作ることも可能です。クラフト麺の受注をいただいてこそ、製麺所を名乗ることができると思っています」(堀江さん)

「星が丘製麺所」のクラフト麺を足がかりに、きしめんのおいしさが再認識され、名古屋の街にきしめんの立ち食い店が軒を連ねることを地元のフードライターとして筆者は願ってやまない。

永谷 正樹 フードライター、フォトグラファー

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ながや まさき / Masaki Nagaya

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。

地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに記事と写真を提供。

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