「貸付金で借金清算」行政に救われた発達障害男性

コロナ禍でシフトを減らされ、手取り14万円

発達障害や性的指向のことを考えると「最後は独りで死んでいくんだろうと思います」と語るナルミさん。それでもこの1年は行政とつながることで希望も見えてきた(筆者撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「長く勤めていますが、他の人が当たり前にできることが自分にはできません」と編集部にメールをくれた、27歳の男性だ。

勉強はできるが、単純作業は苦手

「ここまで数値に差があるのは初めて」

ナルミさん(仮名、27歳)は1年前に初めて成人用の知能検査「WAIS(ウェイス)―Ⅳ」を受けた。このとき、結果を見た臨床心理士からそう驚かれたことを、覚えている。

WAIS―Ⅳとは、発達障害を診断する際の参考にされる検査のひとつ。「言語理解」や「処理速度」といった4つの指標を数値化することで、得意なことと不得意なことの凹凸のあり方などをとらえることができるとされる。この数値の差が20~30あると、相当の生きづらさを抱えているといわれる。ナルミさんは、言語理解は「141」だったのに対し、処理速度は「68」。なんとその差が「73」もあったのだ。

検査についてもう少し説明しよう。

言語理解とは語彙力や抽象的な思考力を測る指標。この数値が高いと、学校の勉強ができたり、言葉で説明することが得意だったりする人が多い。一方の処理速度とは単純な作業を正確に素早く行う力を測る指標。この数値が高いと、マニュアルに沿ったデータ入力やルーティーンの作業をこなすことが得意な人が多い。

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たしかに取材で会ったナルミさんは語彙も豊富で、受け答えも的確で、一見発達障害の診断を受けているようには見えなかった。しかし、現在アルバイトをしている倉庫内作業では「軽度の知的障害を持つ同僚のほうが僕よりも仕事はできます」と打ち明ける。このように得意なことと不得意なことの凹凸はすぐにはわかりづらいうえ、時に「甘えている」「手を抜いている」といった誤解を招くこともある。

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