「貸付金で借金清算」行政に救われた発達障害男性 コロナ禍でシフトを減らされ、手取り14万円

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ナルミさんが本格的に発達障害の生きづらさと向き合うことになったのは、大学に入学してから。日雇いのアルバイトをしたとき、上司から日給を渡されながら、自分だけが「もう来ないでね」と言われたのだという。理由を尋ねると「仕事ができないから」。ナルミさんは「工場内のライン作業で、誰でもできる単純な仕事のはずでした。でも、その『誰でも』に自分は入ることができないんだと思うと、とてもショックでした」と振り返る。

カフェでもアルバイトをしたが、こちらは「遅刻の頻度がはんぱじゃなくて」3カ月ほどで辞めた。肝心の大学ではほとんど単位を取ることができず、2年で中退。「高校までは欠席が続けば学校から連絡がきますが、大学では当たり前ですが、そんなフォローはありません。計画的、自発的に取る授業を決め、レポートを提出するという普通のことが僕にはできなかったんです」。

大学中退後は、同じ会社で倉庫内作業のアルバイトとして働いている。商品の補充や片づけなどの作業には同僚の1.5倍は時間がかかっているという自覚がある。商品の種類や量を間違えるミスも多い。一度、出荷前の商品をチェックする仕事を任されたことがあるが、スピードについていけず数週間で担当を外された。不注意による怪我も絶えない。給料は手取りで月16万円ほどだったが、コロナ禍の影響でシフトカットされ、現在は同14万円ほどだという。

2年前に家出同然で1人暮らしを始めたが…

実家では依然として両親、特に母親とのトラブルが絶えず、次第に自傷行為を繰り返すようになり、2年前に家出同然で1人暮らしを始めた。しかし、ここでは金銭管理の問題に直面することになる。カードローンや消費者金融からの借金があっという間に70万円に膨れ上がってしまったのだ。

ナルミさんは、髪は淡い茶色で、スウェットは鮮やかな珊瑚色、携帯は最新の機種だった。たしかに生活保護水準と変わらない給料では難しいおしゃれや持ち物かもしれない。また、性的指向が「ゲイよりのバイ」で、気に入ったメイク用品などを衝動買いしてしまうこともあるという。一方で自身の浪費癖については十分に自覚しており、「その場で買わないようにしようと、1、2時間かけて我慢することもあります。それでも買ってしまうときは、まるで脳内麻薬が出ているような感じなんです」と話す。

1人暮らしをしてみて気が付いたことがあると、ナルミさんはいう。「僕は人の手を借りないと生きていけないことがわかりました」。

かといって実家に戻っても、修羅場が繰り返されることは目に見えている。ナルミさんはネットなどで調べ、1年ほど前に地元の社会福祉協議会に相談をした。

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