横浜高島屋に「地元のパン」大量に並ぶ深い理由 横浜発「パンのセレクトショップ」の壮大な狙い
パンブームと言われるようになって久しい。次々と新しいベーカリーが誕生し、女性誌ではパン特集が定期的に組まれ、人気ベーカリーにはコロナ禍でも行列ができる。そんな中、新たなパンの“名所”が横浜に誕生した。横浜高島屋に3月正式オープンした「ベーカリースクエア」がそれだ。約40ブランドが集結した売り場に、500種類以上ものパンが並ぶさまは圧巻。売り場を訪れると、何とも言えない熱気に包まれている。
ベーカリースクエアがパン好きの心をくすぐるのは、単に人気ブランドが集まっているからだけではない。この売り場が面白いのは、スクエアの中心に「カナガワベーカーズドック」と呼ぶ神奈川に拠点を置くパン屋の商品を扱うコーナーがあることだ。
パンの「セレクトショップ」手がけた新興起業
ドックには日替わりで50ほどのブランドから約30ブランド、約300~330種類の商品が並ぶ。しかも、そこには実際にパンを焼いている各店舗の店長の写真までディスプレーされており、来た人が、どの人がどんなパンを作っているのかがわかるようになっている。地域のパン屋をここまでフィーチャーするのには、労働者・後継者不足や、利益拡大といった問題を抱えている個人店を救いたいというあるベンチャー企業の思いがあるからだ。
そのベンチャーとは、2018年に誕生したハットコネクト。本社は横浜高島屋からほど近い横浜市内にある。同社はパンのセレクトショップの企画・運営を手がけており、横浜高島屋の店舗はその1つ。これまでに、渋谷スクランブルスクエアで期間限定店舗を出したほか、目黒と自由が丘駅構内には常設店を設けている。
同社はなぜ、通常のベーカリーを開くのではなく、パンのセレクトショップを展開しようと思ったのか。それには、同社を運営する2人、ハットコネクトを始めた矢野勇人氏と、現在代表を務める中島慶氏がそれぞれたどってきた道のりや、2人の出会いを振り返る必要がある。
もともと不動産営業をしていた矢野氏が個人事業主としてパン屋に関わるようになったのは7年ほど前のこと。「以前体を壊したときに、オリーブオイルのよさに目覚めた」ことから、オリーブオイルスプレッドを販売する会社の営業をするようになってからだ。当初は、オリーブオイルの販売会社の商品を気に入って、個人事業主として横浜の百貨店の催事などで売るうち、パンと抱き合わせにするほうが売りやすいことに気づき、パン屋から仕入れたパンと一緒に売るようになった。
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