日本はいかに対応したらいいか。以下の3つが重要だ。
1つ目は、海警法に懸念を示すアメリカ、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどとも協力し、海警法への懸念および中国の国際法違反の行動を広く国際社会に訴え、圧力を強める必要がある。
2013年11月に中国が東シナ海に防空識別圏(ADIZ)を設定した際には、日本以外にもアメリカ、オーストラリア、韓国などが中国に抗議。アメリカは事前通告せずに中国ADIZにB-52爆撃機を飛行させた。中国はADIZで指示に従わない場合に「防御的緊急措置をとる」とした航空会社向けの警告を2014年末に削除した。アメリカを含む関係国と連携しつつ外交努力を継続することは重要だ。
2つ目は、海保の強化だ。1000トン以上の巡視船の数は、2012年までは日本が上回っていたが、現在、中国は日本の2倍を保有、船の大型化も進める。
3つ目は、中国のグレーゾーン戦略に対して「シームレスな対応」が可能な体制の整備だ。
「シームレスな対応」に関し、現在は、中国海警船の領海侵入に、国内法執行を任務とする海保が対応している。海保の武器使用は基本的には警察官職務執行法に準じる。また、海上保安庁法25条は、海保が「軍隊の機能」を果たすことを否定する。この点、法執行に加えて軍事機能も持つアメリカ沿岸警備隊や中国海警とは制度設計が異なる。
武器使用基準は警察官職務執行法が基本
海保で対応しきれない状況となれば、閣議決定で自衛隊に「海上警備行動」を発令できる。
とはいえ、これは国内法執行を担うもので、武器使用基準は海保と同様、基本は警察官職務執行法だ。中国の目的を尖閣諸島の簒奪と捉えれば、自衛隊の防衛出動が考えられ、その場合、「必要な武力を行使」できる。しかし、防衛出動の発動要件は「武力攻撃」の発生でハードルが高い。
わが国はこれまで「武力攻撃」を「組織的計画的な武力行使」と厳格にとらえてきた。安倍前総理が設置した「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が2014年5月に出した報告書は、警察官職務執行法では対応できないが自衛権の発動も法的に困難という「切れ目」を指摘、それを埋める必要性を訴えた。
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