尖閣防衛、日本の「切れ目」狙う中国に警戒せよ

現場の頑張りに頼らず日本全体の備えが必要だ

なお、国連海洋法条約では軍艦、公船を含めて外国船の領海内の「無害通航権」は認めており、領海内に入ることすべてを国際法違反というのは不正確だ。しかし、日本漁船に接近し、また日本の領海で、中国国内法令に基づく法執行活動を行っていると主張する中国海警船の行動は無害通航には該当しない。われわれは「海警法の内容」のみではなく、「海警法」と「行動」が一体となって中国が目指すものを警戒しなければならない。

アメリカの懸念

2019年1月に、アメリカのジョン・リチャードソン海軍大将は中国に対し「アメリカ海軍は中国海警の巡視船と海上民兵の船を戦闘用とみなし、彼らの挑発に対しては中国軍の挑発と同様に対応する」と伝えた。

また、アメリカ国防情報局は、2019年末に、「中国では、海洋主権の問題は中国海警の下での国内法執行の問題として扱われる。また、エスカレーションのリスクを減らし、国際的に中国が穏当に見えるように、紛争のある海域で攻撃的な行動を取る際には、(軍艦ではなく)海警船を用いることを好む」とし、さらに中国は海上民兵も活用していると分析する。アメリカ議会は、2021年度国防授権法において、海上保安活動への漁船の活用に関して調査・報告することをアメリカ政府に求めた。

アメリカを含む関係国が警戒するのは中国の「グレーゾーン」戦略だ。中国は、実力で勝るアメリカとの戦争は、今は避けたい。そのため、「武力攻撃」と取られないよう、海警を前面にたてて領海侵入や「法執行」の事実を積み重ねる。海警は海上民兵、海軍と「シームレス」に連携し、海警法の衣をまとい国内法執行の側面を強調しながら、長期的視点で「一方的な現状変更」を試みる。

「シームレス」な中国に対して、アメリカも「シームレス」な体制を持つ。アメリカ沿岸警備隊は法執行機関であるとともにアメリカ軍の一部で、通常は国土安全保障長官の下にあるが、有事には海軍長官の指揮に服す。2020年12月には、海軍、海兵隊、沿岸警備隊が共同で「海での優位:3軍の共通戦略」を策定し連携強化に努める。アメリカ沿岸警備隊は、今年2月に日本の海保と小笠原諸島沖で合同訓練を実施、海保の能力増強と連携強化にも期待する。

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