漁民の集団化を支援
「海警の力は有限だが、人民の力は無限だ(警力有限、民力無窮)」。
中国南東端の島、海南島。南シナ海を見据えるこの場所で「海南省南シナ海海洋産業発展協会」が立ち上がったのは、約3年前の2018年6月。習近平の海洋強国建設の精神を貫徹するため、中央政府の同意のもと、海南省の党委員会と省政府が有志や起業家に働きかけ、漁民の集団化を支援し海洋経済の発展を目指し始めた。
初代会長となったのは、省の政治協商委員、陳江。協会の設立式で、彼は冒頭の言葉を述べながら、こう発言した。
「協会は政府が制定した産業長期計画に合わせてやっていく。南シナ海の権益擁護を積極的に展開していく。……そうして南シナ海を平和の海に作り変えていくのだ」
習近平は2015年に「軍民融合」を国家戦略に格上げした。翌2016年、中国共産党は「経済建設と国防建設の融合発展に関する意見」を準備。だが発表直前の同年7月12日、常設仲裁廷が南シナ海「九段線」問題で中国に屈辱的な判断を下した。その9日後に公表された「意見」は、次のような指示を盛り込んでいた。
「海洋の開発と海上権益擁護を統合的に計画(統籌)し、海洋強国戦略の実施を進めよ。……行動能力と基礎設備の建設を強化し、党・政府・軍・海警・民が力を合わせ、境界を強化し辺境を守る新局面の形成に励むべし」
同年から中国では抜本的な漁業改革が実施されたが、その強度は「持続可能な漁業」の必要性を大幅に上回る。中大型漁船は中央の管理下に置かれ、漁港は漁船管理基地としてスマート化された。漁船を管理する船舶監視システム(VMS)が劇的に進化し、当局と漁船の双方向かつ密接な連絡が可能になり、当局は指示に従った漁船に報奨金を出しやすくなった。「北斗」を中心とする衛星観測通信網の海上応用が急速に進み、陸と海をつなぐ統合的データプラットフォームが構築された。さらに習近平は国内で党員と人民への政治教育を強化した。
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