日立、中国退け「ワシントン地下鉄」受注の裏側

新工場を建設し、川崎重工業の牙城に食い込む

アメリカの首都ワシントンDCの地下鉄。写真はアルストムが製造した従来車の「6000系」(記者撮影)

アメリカのワシントン首都圏交通局(WMATA)は、新型の地下鉄車両「8000系」256両の製造を日立製作所に発注すると3月17日に発表した。車両の納入は2024年から始まり、オプションとして最大800両の車両を追加製造する契約も含まれる。追加製造も含む契約金額は最大で22億ドル(約2400億円)。日立の鉄道事業にとっては、アメリカで過去最大の案件となる。

8000系は既存車両に比べ、ブレーキ時に生じるエネルギーから電気を回収する回生ブレーキや換気システムを改善したほか、リアルタイム情報などを表示するデジタル画面や防犯のための高精細カメラを備える。首都ワシントンを走行するという特性から厳格なサイバーセキュリティ対策も取り入れる。

日立は8000系を製造するために新たに工場を建設する。「最大400人を雇用し、地域における新たな熟練工を創出する」と、日立の広報担当者は意気込む。

今回の決定に至るまでには紆余曲折があった。日立の前は、WMATAの車両製造の多くを担っていたのは川崎重工業だった。中国が新型車両の受注に意欲を見せたこともあった。ワシントンDCではさまざまな政治ドラマが繰り広げられているが、鉄道車両の受注をめぐっても知られざるドラマがあった。

全米で2番目に混雑する地下鉄

WMATAはアメリカの首都ワシントンDCを中心に、メリーランド州とバージニア州における地下鉄やバスを運営している。

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地下鉄は1976年に最初の路線が開通し、現在はワシントンの郊外と中心地を結ぶ6路線がある。駅数は91。現在は約1300両の車両が稼働している。1日に60万人超が利用し、「アメリカでは2番目に混雑する地下鉄」とWMATAは説明している。ダレス国際空港への延伸工事が行われているが、2018年の完成予定から大幅に遅れており、現在は2022年1~3月が目標となっている。

開業当初に導入された車両のほとんどは引退してしまったが、1980年以降の車両製造の主軸を担ってきたのはイタリアのブレダとフランスのアルストム。ブレダはイタリアの別のメーカーと合併した後、2015年に日立に買収され、現在は日立の海外鉄道事業の主軸を担う。

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