台湾新幹線の製造価格「3倍も高い」カラクリ 独自取材で判明、日本と違う台湾のコスト構造
台湾の高速鉄道に導入が予定されていた新型車両8編成の入札が1月20日に中止となった。運営会社の台湾高速鉄路(高鉄)は4編成の追加オプションと合わせて計12編成の調達を計画していたが、中止の理由として「メーカーの見積もり価格と市場価格の差が大きすぎる」と説明している。
高鉄はメーカー名や入札価格を公表していない。しかし、現行車両の「700T」は川崎重工業、日立製作所、日本車両製造が製造し、また700Tには東芝製の電気機器が多数搭載されていることから、現地では高鉄が交渉していたのは日立、東芝の連合体だと報道されている。なお、日立と東芝が高鉄と交渉していたかどうかは、両社とも公式には「個別案件への回答は控える」としている。
現地報道によればメーカー側の提示価格は1編成当たり50億台湾ドル(約192億円)。これに対して、高鉄が2012〜2015年に追加導入した700Tの1編成当たりの価格は約16.5億台湾ドル(約63億円)だった。つまり、高鉄が導入しようとしている新型車両の価格は700Tよりも3倍高いことになる。
50億台湾ドルという価格は、日本の新幹線車両の価格と比べても著しく高い。JR東海の最新型新幹線「N700S」40編成のN700Sの価格は補修部品等も含め約2400億円。1編成当たりの価格は60億円と推測できる。
新型車両導入の経緯
新型車両の価格はなぜそれほどまでに高いのか。台湾高速鉄道プロジェクトの関係者たちに取材を続けたところ、その理由がおぼろげながら見えてきた。
高鉄の主力車両700Tは東海道新幹線「700系」をベースに開発された。2007年の開業時に30編成、その後2012年から2015年にかけて4編成が導入されている。さらに高鉄は輸送量の増加や将来の延伸計画に対応するため、2017年に新たな車両の導入の検討を始めた。
700Tを増備するという選択肢もあったが、700系は2006年に生産終了となっており、700Tを構成する主要部品の調達が不可能に。そのため、新型車両を導入することになったという経緯がある。とはいえ、新型車両導入の経験がない高鉄には車両の仕様を策定するノウハウが乏しく、JR東海が仕様策定のサポートを行っている。
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