かつてゲリラ戦法で列強と戦った共産党にとり、数の多い一般人(特に漁民)の海洋問題への投入は伝統的かつ正当な手法である。海洋「軍民融合」の最前線となる海南省では、上述の通り当局が漁民を組織化し、海洋経済の発展を図って南シナ海から他国を駆逐しようとしている。本年2月発効の中国海警法を踏まえれば、今後はそれが全国規模で進むはずだ。
海警法は、中国海警の活動範囲を「管轄海域とその上空」と定める。「管轄海域」は中国の主張する領海・接続水域・排他的経済水域(EEZ)・大陸棚・「九段線」内の水域を含み、外縁はほぼ第一列島線をなぞる。実際にはその面積の半分が他国との係争海域だ。だが同法は、海警に「海上境界の管理と保護」の任務を課した。
今後、海警は外交交渉を待つことなく、「管轄海域」全域で中国の実効統治を打ち立てていかねればならない。他方、国連海洋法条約はEEZや大陸棚の上空で沿岸国の権利を認めない。しかし海警法を踏まえ、海警はそこがあたかも中国の空間であるかように任務を遂行するだろう。
海の管理をめぐる新たな分業体制
海警法は海の管理をめぐる中国国内の新たな分業体制を示す。まず軍との関係を見てみよう。
中国人民解放軍、そして武装警察とその隷下の海警はすべて中国共産党中央軍事委員会の指揮を受けるが、平時の守備範囲は異なる。武装警察は国内の脅威に対応する。多くの漢族が「テロリスト」とみなすウイグル人を取り締まるのは彼らだ。ここで「管轄海域」は、中国で「海洋国土」と呼ばれている。その中の治安維持は海の武装警察である海警の担当だ。両者が中国の中を守る前提に立つと、解放軍はその外の脅威と戦う任務に集中できる。つまり海域では今後、解放軍は第一列島線の外側を主な活動の場にしていく。
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