例えば地図アプリの「高徳地図」は中国各地のワクチン接種病院を可視化し、無料でアプリ上で閲覧できるサービスを1月9日にリリース。
クラウドサービスを提供する「アリババクラウド」は物流や企業ビッグデータに関するプラットフォームを無料で開放した。PRを兼ねて既存技術をアップデートし、公開する試みは春節前後に集中。
「新型コロナのパンデミックは中国にとっても未曽有の国難だったわけですが、転んでもタダでは起きない、とでも言いましょうか……」(加藤さん)
官による通貨のデジタル化である、デジタル人民元(数字人民元)に関しても動きがあった。首都である北京では、2月7日からデジタル人民元の一般配布導入実験が開始された。
このデジタル人民元、利用可能時期は「春節期間中のみ」と設定されていた。1年の中で最も消費が活発になり、かつ、パンデミックの影響で非接触決済が推奨される時期に実験を開始したことになる。北京冬期五輪で本格的に使用することを想定しているという。
DXは個人情報とトレードオフ?
香港と深圳、中国各地の様子を比べてみると、DX施策については中国本土のほうが先行しているようにも思える。新型コロナの追跡アプリに関しても、深圳市では基本的に全員ダウンロードが必須だ。香港のように個々人が店舗ごとにQRコードを読み込まずとも、自動で位置情報が収集され、自身が濃厚接触者ともなれば自動的に公共機関に通知がいき、隔離を受けることになる。
デジタル人民元にしても、ライブコマースにしても同じことで、位置情報、購入履歴、決済情報などがすべて電話番号と紐づいて把握、管理されているからこそ実現できるDXともいえるのだ。
2019年の民主化デモ以降、個人情報管理に気を配る香港人は多い。「新型コロナは怖い。一刻も早く収束してほしい。でも、もし自動的に位置情報を収集されるような追跡アプリができたら、そして強制的にダウンロードしなければならないとしたら、それはまた別の意味合いを持つ」――。そのように語る香港人もいる。陸続きの香港と深圳だが、そこには大きな隔たりがある。
(調査協力:加藤勇樹)
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