SARSの記憶が残る香港では、一般的に新型コロナウイルスに関する警戒心が非常に強い。香港政府が発動する規制も強力だ。しかし、長引く規制に疲れ切った人々の、コロナに対する警戒心が薄れたことも第4波が長引いた要因とする声もある。
春節休暇半ばの2月16日、香港の有名なお参りスポットである「黄大仙(ウォンタイシン)」を訪れてみると、筆者ですら足を踏み入れることがはばかられるほどの「超・密」状態だった。
入り口に混雑状況を映し出す大型モニターが設置されていたが、混雑している状態であっても多くの人が境内に吸い込まれていく。
もちろんここでも「安心出行」のQRコード登録は必須で、もしくは紙で入場記録を提出することは必須で、登録と申請の長い列ができている。
列に並んでいた香港人男性のレオンさん(40代男性)は「新型コロナウイルスはもちろん怖いけれど、新年のお参りは欠かすことができない。来年はいい年になるように、お祈りに来たよ」と話した。
またレオンさんの妻のアンジェラさん(40代女性)も「規制が長引いてみんな疲れている。家に引きこもってばかりだと精神的に参ってしまうので、今日は思い切って外に出てきたのよ」とため息をついた。
中国ではDXで故郷へ“バーチャル帰省”
一方、国境を越えた深圳の状況はどうだろうか。2020年12月30日に香港から深圳に戻った加藤勇樹さんは、2015年から中国在住。現在は広州市に住んでいる。しかし、これまで見たことのない春節の様子に驚いた。駅も街中も閑散としている。
深圳市は、春節に帰省しない住民を対象に、抽選で1人当たり200元(約3200円)のお年玉を配布した。また、企業に対しても、従業員が大都市から移動しなかった場合は、1人あたり2000元(3万2000円)の給付金を支払った。
例年、春節の前後1か月は、駅や空港は国内を移動する人々でごった返す。移動者総数も数億人以上に及ぶ。しかし中国鉄路総公司によると、2021年の春節は、鉄道を用いた春節シーズンの移動者数が70%以上減少した。中国国務院の調査によれば、全交通機関の利用者数は2019年比較で7割減少、2020年と比較しても4割減少したという。
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