新型コロナウイルスのパンデミックが拡大してはや1年。中華圏最大の行事「春節」の時期には例年、多くの人が香港と深圳間のボーダーを越えて行き来するが、今年はその“大移動”がすっかり鳴りを潜めた。
代わりに中国本土では春節のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、帰省を“しない”人に対してお年玉を支給する珍施策まで登場。陸続きの香港とは人々の行動様態も、政府の取り組みにも大きな違いがみられる。最近の規制状況とともに振り返ってみよう。
長くつらい第4波に見舞われた香港
香港には2020年11月末から、第4波が到来。11月29日には、新規感染者数が115人にのぼった。
人口700万人の香港では、新規感染者数が100人を超えると社会全体に相当な緊張感がもたらされる。香港政府は夜間の店内飲食を午後6時まで、公共の場での集合制限を2人まで、ジムやネイルサロン、エステなどの営業を禁止するなどの規制強化に乗り出した。
こうした規制が緩和されたのは実に2月18日のことだ。およそ3カ月間、夜間の外食もできず、3人以上で集まることもできない。運動して気晴らしをしようにも、ジムもプールも開いていない。さらに学校もすべて対面授業が禁止され、全クラスZoomで開校――。こうした規制は春節の期間にもかかっていたため、香港の人々は基本的には家で家族と過ごすことを余儀なくされた。
香港では、感染経路の追跡や濃厚接触者の特定を目的に、2020年11月からは、新型コロナ追跡アプリ「安心出行(LeaveHomeSafe)」がリリースされ、飲食店や公共施設に立ち入る際は登録が必須になった。
アプリをダウンロードして、施設の入り口にあるQRコードを読み込み、名前や電話番号、入店時間などを入力する。アプリを使えない人はどこに入るにもひたすら登録用紙の記入が必要になる。
この登録用紙、多くはメモサイズで、自身の名前、電話番号、入場時間、大きな公共施設などは行き先フロアを書いて収集箱に入れる。しかし多くの店舗では記載内容は誰もチェックしていない。よってすべての人が正確な情報を記入しているとは限らない。入店者が本当に書いたかどうかもチェックしていない店舗すらある。なかなかアナログな仕組みである。
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