コロナの中でも、新しい季節は変わらずやってくる。2月の中学受験シーズンを終えた東京の街。卒塾する6年生を送り終えた塾の教室に、夕方、来年以降に受験を目指す子どもたちが続々と入って行く。
“勉強漬けでかわいそう”。そんな憐れむような、冷ややかな視線を送る大人も少なくない。とくに偏差値が50に届かない、40台や30台の子どもたちは気の毒などと言われがちだ。
勉強ができない子は、勉強が嫌いだからやらない。だから、成績も上がらない。多くの大人はそんな理屈で考えがちだが、一人ひとりを細やかに見ると、子どもによって事情はまったく違う。
「情報を探しても、うちのようなケースの話はまったく見当たらなくて、本当に苦しかった」
先日、娘が中学受験を終えたばかりの藤堂美佐子さん(仮名)はそう振り返る。
「偏差値の低い子は、地元の中学に行ったって、結局、自己肯定感を喪失させられます。偏差値を中心に評価されるような中学生活を、娘には送らせたくなかった」
あまり語られることのない、中学入試の偏差値低位層における子どもたちの受験模様。懸命に中学受験の学びを続けた少女の家族に話を聞いた。
合格した第一志望校は偏差値40台
東京都に住む来夢さん(6年生、仮名)は、この2月、志望していた私立中学から合格通知を受け取った。「私、第一志望校に合格できた!」声を弾ませる来夢さんは、自信に満ちていた。
四谷大塚の偏差値では40台後半に名前の載る学校だ。偏差値上位校に入ることこそが、中学受験の成功だと考える価値観からすると、この程度の偏差値では“成功とは呼べない”。そう考える人もいるだろう。だが、彼女にとっては間違いなく、これは大きな勝利だった。
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