中学受験「偏差値40台」目指した子の最後の結末 偏差値50以下の受験に挑むことの意義

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姉と違い、勉強を怠けているわけでもなく、毎日コツコツと勉強を続ける来夢さん。いつか、結果が出る日がくるだろうと、SAPIXでの学びを続けたが、5年生の秋になってもまったく変化は見られなかった。偏差値は30台。こんな状態で中学受験をするのが彼女にとって本当によい選択なのか……。両親は苦悩した。

「受験をやめることも考えましたが、本人がやめたくないと言って……。それに、もし中学受験をやめて、地元の公立中学に進んだとしても、すぐ先には高校受験があり、さらにシビアな偏差値競争が待っています。

中学でも成績が上がらず、劣等感の上塗りを繰り返す3年間になるかもしれない。そう思うと、内申点も関係なく、勝負する教科数も少ない中学受験のほうがいいのでは、と感じたんです。そして、中学時代は伸び伸びと過ごして、その先にある大学で進路をゆっくり考えてほしいと……」

こうして受験を続けることは決めたものの、SAPIXは難関校を狙う塾だ。ちょっと努力したところで成績はそうそうあがらない。下のランクというレッテルを貼られた状態で通っても、よい影響はないのでは――母親がそう考え始めたとき、父親の信介さん(仮名)が、隣駅にある塾の情報を持ってきた。

会社の同僚の子が通っていたというその塾は、「少人数指導で手厚く見てもらえるらしい」という。美佐子さんは早速、来夢さんを誘い、体験授業を受けに行った。

地域密着の個人経営の塾で、この校舎の先生は3人ほど。1クラスの人数も10人前後と少なめだ。男子生徒が多いものの、来夢さんもこの塾が気に入ったようだった。ここなら、学びの定着が遅い娘でも、丁寧に見てもらえるかもしれない。そう思った美佐子さんは、SAPIXをやめ、転塾させることにした。

姉とはまったく違った学校選び

すでに5年生の秋、志望校選びも始まった。姉のときとは偏差値帯も違うため、見る学校も変わってくる。

娘のよい部分を見て、伸ばしてくれる学校はないか。中学受験をあきらめずに、毎日机に向かい頑張る娘を応援したい。「娘に合う学校を見つけよう」と、通学圏内の学校をくまなく探した美佐子さん。見学した学校は25校にも上った。このうち、来夢さんと訪れたのは16校。6年生になってからは、コロナの影響でオンライン説明会となった学校もあった。

「オンラインでは実際の雰囲気がわからない部分もありました。でも、説明会は日程がかぶることも多かったので、オンラインだと移動もなく、多くの説明会に参加できるというメリットもありました」

次ページ来夢さんの「逃亡」
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