危機から学ぶことの難しさ
危機から学び、それを次の危機への備えとする。日本では、それがなかなかできない。政権が変わった。危機に対峙した担当者が異動した、または退任した。組織再編により所掌が変わった。さまざまな理由で、次こそはうまく立ち向かおう、経験を次の世代に引き継ごうといった思いは、簡単に途切れてしまう。日本が危機の学びを生かし、再び危機を起こさせない、あるいは起こっても次の危機にしっかり備えるためには、政策立案や改革のフィードバック・ループを途切れさせない「結び目」としての検証が欠かせない。
日本はこの10年、東日本大震災を機に発生した福島第一原発事故と、新型コロナウイルス感染症のパンデミックという国家的危機に直面してきた。手前みそになるが、独立系シンクタンクのアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)は、2012年に「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)」、2020年に「新型コロナ対応・民間臨時調査会(コロナ民間臨調)」を立ち上げ、国家的危機の「検証」に取り組んできた。
さらに福島第一原発事故の10周年を迎えるに当たり、APIは「福島原発事故10年検証委員会(第二次民間事故調)」をつくり、この10年で日本が何を学んだのかを検証する『民間事故調最終報告書』を刊行した。
検証の意義とは何か。それは、国家や組織における重大な事象、なかでも危機が生じた際、その備えや対応に関する真実を洗い出し、ベストプラクティスや課題、教訓を取りまとめ、実践的な提言とともに、よりよい国家・組織の運営につなげることにある。事故であれば、その再発を防ぐことを目指す。
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