哲学者が議論「監視の技術」はいつ誕生したのか

近代特有なのか、古代にも存在していたのか

監視テクノロジーは、哲学の視点から見るとどう捉えられるのでしょうか?(写真:PIXTA)
ビッグデーターや、IoTなど現代社会ではさまざまなテクノロジーが登場しています。世界の哲学者はこれまで人間と技術(テクノロジー)について何を考え、哲学を展開してきたのでしょうか。哲学者で玉川大学文学部名誉教授の岡本裕一朗氏が上梓した『哲学と人類 ソクラテスからカント、21世紀の思想家まで』を一部抜粋・再構成し、哲学の視点から見た、監視テクノロジーを解説します。

20世紀におけるテクノロジーの変化を示すものとして、「監視テクノロジー」の転換に触れておきましょう。周知のように、「監視」というテーマを、テクノロジーの問題として議論したのは、ミシェル・フーコーです。しかし、どうして「監視」がテーマとなったのでしょうか。

その理由は、「監視」が近代社会そのものを根本的に規定していることにあります。フーコーによれば、近代では、人々を同じ場所に集め、多様な形で配分して、規律訓練するシステムが形成されました。この典型が監獄ですが、その他にも学校・工場・軍隊・病院・寄宿舎などが、同じ形式になっています。近代人は、こうした集団化のなかで規律訓練され、社会的な秩序を維持していくわけです。

規律訓練のために使われる「監視」

こうした規律訓練のために使われるのが、「監視」のテクノロジーです。フーコーはそれを分析するため、「監獄」に焦点に絞って、その構造を解明しています。そのとき引き合いに出されたのが、有名な「パノプティコン(一望監視施設)」と呼ばれる監獄施設です。このモデルは、もともとは功利主義者のジェレミ・ベンサムが考案して設計したのですが、これをフーコーは近代社会の基本モデルと見なしたのです。

今ではよく知られていますが、議論の都合上、パノプティコンの具体的な形態について、フーコーの説明を取り上げておきましょう。

(パノプティコンは)塔のてっぺんからそれを囲んで円形に配置された囚人用監房を監視するといった建築プランで、逆光になるので相手に見られることなく、中央から一切の状況や動きを監督できるというものです。権力は姿を隠し、二度と姿を現さないが、存在はしている。たった1つの視線が無数の複眼になったも同然で、そこに権力が拡散してしまっているわけです(フーコー『フーコー思考集成』Ⅴ)。

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