哲学者が議論「監視の技術」はいつ誕生したのか

近代特有なのか、古代にも存在していたのか

この「パノプティコン」を、メディアという観点から考えてみましょう。フーコーの議論には、「見る―見られる」という関係に関して、3つの特徴があります。

1つは、見るほうは「少数」であり、見られる方が「多数」であること。極端な場合、1人で全部の囚人を見ることもできます。あるいは、監視者はシルエットだけにして、見るほうを「ゼロ」にすることも可能です。いかにも、功利主義者が考案したモデルです。最少の人数で、最大の効果をえることが目的なのです。

囚人はつねにみられている意識

もう1つは、「見る―見られる」関係が非対称的であること。監視者はつねに見るほうであって、囚人から見られることはありません。逆に、囚人の方は、見られていても、ほんとうに見られているか、確認できないのです。そのため、見られるほうは「いつでも見られている」という意識のもとで、「規律・訓練」を形成することになります。

あと1つ付け加えると、この監視のテクノロジーがアナログ技術であり、目で観察し、手を使って文書に記録すること。記録がアナログ式に文書化されるという点で、それぞれの施設や集団は、1つひとつが独立していて、別の施設や集団には情報が流通し難いのです。

たとえば、学校での情報と、病院での情報は、よほどの要請がないかぎり、相互に参照されることはないでしょう。特定の個人をピックアップすれば、その人の情報を集めるために、各集団に問い合わせをして、情報を収集することもできますが、そうした状況は特別な場合であって、普通のときはそれぞれの集団は閉鎖的なのです。

20世紀も中頃までは、こうしたフーコーの議論にもリアリティーを感じることができましたが、世紀末になる頃には、技術もアナログからデジタルへと転換し、フーコーが議論した「パノプティコン」モデルにも変更が必要になってきました。

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