現代自動車が米ロボット企業を買収したワケ ボストンダイナミクス社の技術で将来へ布石

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ロボットを定義すれば、「ある作業や創作を自動的に行う機械装置」だ。自律走行車は基本的にロボットに近い。このような観点から、現代自動車がボストンダイナミクスを買収したことで得られる効果がはっきりしてくる。

現代自動車の将来の事業構想の8割が自律走行とUAM事業の高度化だ。ボストンダイナミクスが保有する核心的な技術を振り返れば、大きく認知、制御、IoT、人工知能(AI)に分けられる。これは現代自動車の自律走行やUAMにも該当する。あらゆる環境の変化を正確に認知して、正確な判断を下し、それによる精密な駆動ができることが要だ。現代自動車はボストンダイナミクスの技術力を持って技術的な進歩を遂げられることを狙っている。

現代自動車の関係者は「ボストンダイナミクスには体系的なロボット研究システムやロボット分野での優秀な人材やノウハウなどがある。これらを現代自動車が保有しているグローバルな事業力と結合することでシナジーが最大化されることに加え、先端技術のリーディングカンパニーとしてのブランドイメージまで向上できる」と期待する。

鄭会長が228億円の私財で投資も

もちろん、ボストンダイナミクスとどれだけシナジーを発揮できるかは不透明だ。閉鎖的とされているボストンダイナミクスの企業文化に、現代自動車がその技術に対してどれだけ接近できるかという疑問も湧く。韓国・ハナ金融投資のソン・ソンジェ研究員は「技術中心の企業である特性上、その技術を担う主要人材が残ることが肝心。買収後の統合過程を見守る必要がある」と指摘する。

現代自動車が買収しても、ボストンダイナミクスは独自の経営を行うとの見方が支配的だ。ただ、フェリー副社長は「現代自動車はわれわれとともに多様な方向性を共有する優秀で才能のあるロボティクスチームを持っている。自律走行と関連した多くのことが、自社製品の自動化と関連したDNAを共有できる」と述べている。

シナジーは将来の事業領域にだけ限られているわけではない。前出のソン研究員は「中長期的には、認知、判断、制御技術を活用できる現代自動車と主要グループ会社の現代モービスにとって肯定的な効果をもたらすだろう。現代グロービスには短期的にいち早いシナジー効果が生じそうだ」と説明する。今回の買収で10%の買収資金を供出する物流企業・現代グロービスは、物流自動化に向けて一歩踏み出せる。現代グロービスは2020年8月に韓国のロボット企業と事業提携で合意するなど、物流自動化に大きな関心を示してきた。

今回の買収が大きく注目されているのは、鄭会長が個人マネーで資金を投入していることがある。鄭会長はボストンダイナミクスの買収に私財2400億ウォン(約228億円)を投入、株式の20%を持つ。業界では、鄭会長の株式買い入れが「自信の表れ」との声がある。ボストンダイナミクスが成功すれば、鄭会長は自分の経営能力を立証するのと同時に、安定的な会社支配力を持つようになるためだ。

韓国「中央日報エコノミスト」
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