ソフトバンクG、資産売却の加速が呼ぶMBO観測 巨額買収の英アームとはわずか4年で“お別れ"

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2016年のアーム買収発表会見。孫正義氏は「過去10年ずっと考えてきた案件だった」と語っていた。(写真:ソフトバンクグループ)

「私の事業家としての人生最高の日だ」――。

2016年7月18日。ソフトバンクグループ(SBG)はイギリスの半導体設計会社のアームを約3.3兆円で買収すると発表した。この日、SBGの孫正義会長兼社長は記者会見で感慨深げにそう語っていた。

「最高の日」から4年余り。SBGは9月14日、アームの全株をアメリカの半導体大手・エヌビディアに最大400億ドル(約4.2兆円)で売却すると発表した。孫氏は当時、「これからやってくるIoT(モノのインターネット)のパラダイムシフトに向け(カギを握る半導体分野に)先行投資する」とアーム買収の意義を語っていただけに、あっけない“別れ”となった。

アームを売りエヌビディアの大株主に

だが、「SBGはもはや投資会社だ」と孫氏自身が明言しているように、アームを「純投資」の一環として捉えると、単純計算で4年の間に9000億円分、価値が上昇したことになる。

今回の売却は2022年3月に取引完了を予定しており、SBGは120億ドルの現金と、エヌビディアの株式215億ドル相当(約6.7~8.1%)を手にする見込みだ。また、アームの業績が一定の財務指標を達成すれば、株式か現金のいずれかで最大50億ドルがSBGに支払われる。

これについて格付け会社S&Pグローバル・レーティング・ジャパンの西川弘之・上席アナリストは、「投資会社として保有資産を売却し利益を得ながら、質のよい資産に入れ替える行動は、財務健全性への影響も考慮して行われるのであれば一定の評価ができる」と話す。

すでに投資会社としての色合いは強まっていた。2020年4月にはアメリカの通信子会社だったスプリントが同業のTモバイルUSと合併し、6月に一部株式を売却。会計上の「非継続事業」となり、今や純投資先だ。通信事業の重要性が低下したことで、9月18日にはアメリカの携帯電話卸・ブライトスターの全株売却も発表した。国内では通信子会社のソフトバンクの株式約22%を売却すると発表。売り出し総額は約1.2兆円になる。

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