超電導体とシンバルの意外な接点
「うちでシンバルの材料をつくれるかもしれない。困ったことがあったら電話してください」
2006年、小出製作所に1本の電話がかかってきた。相手は福井県福井市にある合金製造会社、大阪合金工業所(以下、大阪合金)の常務(当時)の文殊義之さんだ。それまで小出社長と大阪合金につながりはなく、唐突な申し出だった。
大阪合金は、超電導体を開発している企業だ。超伝導体とは、特定の低温下で電気抵抗がゼロになり、「伝わった電気をすべて通す」素材のこと。当時、大阪合金はフランスの核融合炉向けに、超電導体用の材料をつくっていた。
そんな理化学系企業がなぜ、と思うかもしれない。しかし驚くことに、この「核融合炉向けの超電導体用の材料」が偶然、シンバルの材料に近かったのだ。青銅に、ニオブ(Nb)という原料を混ぜると超電導の材料になる。ニオブを抜くと、シンバル用に使う青銅に近い組成になるのだ。
この偶然の接点が、小出シンバルの運命を変えることになる。それまで小出製作所は、ドイツやトルコから青銅板を輸入していた。「日本唯一」を掲げながら、材料は海外製。本当の意味での「国産シンバル」とは言えなかった。大阪合金との出会いが、悲願を叶える第一歩となった。


















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