「社員は3人」「企業秘密は持たない」日本唯一のシンバルをつくる町工場76歳社長→東京スカパラや日本フィルから熱烈に支持される訳

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
小出俊雄社長
小出俊雄社長。シンバルの音を確認するために置かれたドラムセットを前に(筆者撮影)
この記事の画像を見る(11枚)
日本唯一のシンバル工場「小出製作所」。前編では、小出俊雄社長が失敗の山からシンバルづくりの神髄を掴むまでを追った。しかし、「日本唯一」を掲げながら、材料はまだ海外からの輸入品だった。本当の国産シンバルへの道は、1本の電話から始まる――。
後編では、盟友となる合金メーカーとの運命的な出会い、世界唯一の技術開発、そして、東京スカパラダイスオーケストラや日本フィルハーモニー交響楽団の演奏者が「小出シンバル」のシンバルを選ぶまでの軌跡について。さらに、「シンバルに秘密はない」と語る小出社長の、ものづくりの流儀に迫る。
前編:従業員3人の町工場から「世界5強」に挑んだ!→「資料も師匠ない」逆境から《日本唯一のシンバル》をつくった76歳社長の執念

超電導体とシンバルの意外な接点

「うちでシンバルの材料をつくれるかもしれない。困ったことがあったら電話してください」

2006年、小出製作所に1本の電話がかかってきた。相手は福井県福井市にある合金製造会社、大阪合金工業所(以下、大阪合金)の常務(当時)の文殊義之さんだ。それまで小出社長と大阪合金につながりはなく、唐突な申し出だった。

大阪合金は、超電導体を開発している企業だ。超伝導体とは、特定の低温下で電気抵抗がゼロになり、「伝わった電気をすべて通す」素材のこと。当時、大阪合金はフランスの核融合炉向けに、超電導体用の材料をつくっていた。

そんな理化学系企業がなぜ、と思うかもしれない。しかし驚くことに、この「核融合炉向けの超電導体用の材料」が偶然、シンバルの材料に近かったのだ。青銅に、ニオブ(Nb)という原料を混ぜると超電導の材料になる。ニオブを抜くと、シンバル用に使う青銅に近い組成になるのだ。

この偶然の接点が、小出シンバルの運命を変えることになる。それまで小出製作所は、ドイツやトルコから青銅板を輸入していた。「日本唯一」を掲げながら、材料は海外製。本当の意味での「国産シンバル」とは言えなかった。大阪合金との出会いが、悲願を叶える第一歩となった。

次ページ熱意が、研究者たちを巻き込んでいく
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事