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「社員は3人」「企業秘密は持たない」日本唯一のシンバルをつくる町工場76歳社長→東京スカパラや日本フィルから熱烈に支持される訳

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小出社長は、「良い音に正解はない。だから挑戦しがいがあるんです」といたずらっこのように微笑む。

小出社長は音楽の話になると、ことさら笑顔になった(筆者撮影)

「赤字でなければいい」——本業が支える挑戦

小出製作所のシンバルは今、国境を越え始めている。

2019年、アメリカへの輸出を開始した。現地の代理店を通じて販路を広げ、2020年にはアメリカのドラム専門誌で特集が組まれた。日本のものづくりを世界に発信するYouTubeチャンネル「ジャパニーズインダストリー」で製造風景が公開されると再生数が伸び、現在58万再生(2025年12月時点)に。機械で自動化されず、職人たちが1枚1枚を手づくりする姿に称賛が寄せられている。

ヨーロッパでも使われている。あるとき、顧客がミラノの歌劇場のオーケストラボックスで小出シンバルが使われているのを発見し、教えてくれたという。

「アメリカの小売店でいくつか取り扱ってもらっていて、ヨーロッパではロンドンの店に置いてもらっています。なかなか難しいけど、徐々にグローバルブランドにしていけたら」

研究開始から今年で26年。事業は軌道に乗ったといえるのだろうか。

そう尋ねると、「シンバルはほとんど利益が出ない。でも、赤字でなければいいんです」ときっぱり答えた。

現在の業績は明かさなかったが、2004年の年間売り上げは約300万円。4年後の2008年でも約500万円程度だった。町工場の経営を支えるには、あまりに小さな数字だ。

追い打ちをかけるように、銅の価格はこの20年で2倍になっている。一方で、手作業の工程は効率化できない。1枚1枚、叩いて削って、音を確かめる作業に近道はない。

それでも続けられるのは、本業の金属加工があるからだ。鉄道部品や医療機器など、図面通りに形にする仕事が安定した収益を生んでいる。その土台があるからこそ、利益度外視の挑戦ができる。本業で稼ぎ、夢で攻める――。

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【ものづくりへの情熱は衰えない】

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