「社員は3人」「企業秘密は持たない」日本唯一のシンバルをつくる町工場76歳社長→東京スカパラや日本フィルから熱烈に支持される訳

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さらに、B23に改良が加えられ、チタンを加えた「B23Ti」、鉄とジルコニウムを加えた「FeZr」という、全く新しいシリーズも生まれた。錫(8〜23%)をベースに、鉄、チタン、ジルコニウムを配合する。その割合で、耐久性、音の立ち上がり、響きの長さ、振動の伝わり方までが変わるシリーズだ。

理論上、チタンやジルコニウムの鋳造は「真空状態」でしかできない。可能にしたのは、大阪合金が特許を持つ技術だった。

これらの研究開発は2013年、経済産業省から表彰を受けている。従業員3人の町工場と合金メーカー、大学、研究機構が協力して生み出した成果が、国から認められた瞬間だった。


そこから時を経た現在、「小出シンバル」は大きくは4シリーズを展開している。ただし、素材、厚さ、直径、ハンマリングのパターンで音は無限に変化する。同じB23でも、薄くつくれば音は柔らかく、厚くつくれば力強くなる。

青銅
大阪合金と小出製作所、福井大学による共同開発で多彩な青銅が生まれた(筆者撮影)

<4シリーズ、200品以上のラインナップ>

小出シンバルの現在のラインアップ
小出シンバルの現在のラインナップ。小出社長の説明を基に筆者作成

プロが認めた音——ポップス、ジャズ、クラシック

技術の進歩とともに、小出シンバルはプロの世界に浸透していった。

元東京スカパラダイスオーケストラのバンドマスターで、打楽器奏者のASA-CHANG(朝倉弘一)さんは10年以上の愛用者だ。

「小出シンバルとの出会いは、持っていたシンバルをより希望の音に近づくように削ってもらったのがキッカケです。国内ならではのきめ細かな対応と技術で、思い通りのシンバルを手に入れることができました」と語る。

彼から、「50年代のジャズのレコードで聴くような音のシンバルがほしい」とリクエストされ、通常より薄く、表面の凹凸を深くしたシンバルを製作したこともある。ASA-CHANGはそのやさしい音色を気に入り、ライブやレコーディングで使用しているという。2009年に朝日新聞のインタビューに答えた際には、「大手製は万能だけど没個性になりがち。職人がつくってくれるのは強みですね」とも話している。

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