ソフトバンクG、資産売却の加速が呼ぶMBO観測 巨額買収の英アームとはわずか4年で“お別れ"

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では、時価総額10兆円を超すSBGが実際に非上場化するのは可能なのか。SMBC日興証券のクレジットアナリストが試算した直近のリポートが参考になる。要約するとこうだ。孫氏自身や資産管理会社の名義で保有する分と自己株式を除くと、約65%の株式取得でMBOができる。直近の株価に2割強のプレミアムをつけたその株式65%分の価値は約10兆円だ。

だが、これをすべて借り入れで賄うと、SBGが重視する指標であるLTV(ローン・トゥ・バリュー、保有株式価値に対する純有利子負債の割合)が大幅に悪化する。一定の財務健全性を保つならば、約5兆円分の追加の資産売却が必要と試算している。リポートでは具体的な売却対象までは触れていないが、資産売却の現実的な選択肢は、保有株式の中で15.6兆円と最も価値が大きいアリババだろう。

焦点は11月の中間決算会見

一方、M&Aに詳しい早稲田大学ビジネススクールの服部暢達客員教授は、LBO(レバレッジド・バイ・アウト、買収先の資産などを担保に資金を調達するM&Aの手法)を前提に、「理論的には不可能ではないが、現実的には難しい」と話す。

というのも、「LBOの場合は既存の借入金をすべて借り換えなければならず、(非上場化のための買収は)純有利子負債分の金額も確保する必要があり、それだけの多額の資金を融資する金融機関があるかどうかは疑問だ」(服部氏)。

孫氏が公の場に出てくるのは、四半期決算の発表の場にほぼ限られる。巨額の資産売却を推し進めて軍資金が積み上がる中、次の一手をどう繰り出すのか。11月上旬に予定される中間決算会見の孫氏の発言が目先の大きな焦点になる。

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