これまで次のことを述べてきた。(1)2007年ごろまでの期間において、アメリカの住宅、自動車への支出が長期的な趨勢よりかなり増加した。(2)それは住宅価格高騰を背景とした住宅ローン(モーゲッジローン)の増加によって賄われた。・こうした支出は、アメリカ国内での生産より輸入で賄われた部分が大きい(なお、自動車の場合は、日本メーカーによるアメリカ国内生産もかなりある。ただし、部品が日本から輸入された)。
具体的な数字で示すと、下表のとおりである。02年から06年の5年間において、住宅投資は約3・3兆ドル(A)、自動車への支出は約2兆ドル(B)で、これらの合計は約5・3兆ドルだ(A+B)。他方、住宅ローンの純増は約4・5兆ドル(C)、消費者ローンの増は約0・5兆ドル(D)で、合計は約5兆ドルである(C+D)。A+BとC+Dは、ほぼ同じ値になっている。
これらのかなりの部分が輸入で賄われたのだが、重要なのは、輸入がいかにファイナンスされたかである。それは、アメリカの輸出で賄われたよりもむしろ、ネットの対外債務を増やすことによってファイナンスされたのだ。つまりアメリカの経常収支赤字が拡大し、それが資本収支での黒字(外国からのネットの投資)によって穴埋めされたのである。簡単に言えば、「貿易黒字国から借りた」ということだ。
具体的には、表の下半分で示すように、この期間のアメリカ経常収支赤字の合計額は、約3・2兆ドルになっている(他方で、同期間のアメリカの対外資産のネットの変化は、約3兆ドルだ。この差は誤差脱漏である)。
表の上半分の数字と比較すると、この間の「住宅ローン+消費者ローン」(あるいは、「住宅投資+自動車購入」)の6割程度は、アメリカの対外負債のネットの増加で賄ったことになる。これは国のレベルの「ベンダーファイナンス」と言えるものだ。つまりアメリカでは、家計のレベルで「借り入れを増やして支出を増やした」のだが、国全体としても6割方はそうなっていたわけだ。