また、WTOの枠組みのいくつかが中国の実態に適切に対応できていないという問題もある。例えば、中国は経済・貿易大国だがいまだに途上国としての恩恵を手にする。また、禁止される補助金の定義が狭い(いわゆるpublic bodyが供与する補助金に限定)ために、中国の補助金を効果的に規制できていない。すでに日米欧で協調して改善策の検討が行われているが、賛同国を増やしてWTOルールを改善することが重要であり、わが国も努力を継続すべきである。
バイデン氏は副大統領時代にTPP(環太平洋パートナーシップ協定)を推進、TPPへの拒否感はないと思われるが、選挙中は、新たな貿易協定は国内投資など国内の体制が整ってからと強調してきた。大統領の貿易促進権限(Trade Promotion Authority:TPA)は2021年7月に期限が切れる。選挙中の「まずは国内」という公約に鑑みれば、7月前に駆け込み参加は考えにくい。
年明け2021年1月5日のジョージア州の2つの決選投票の結果次第だが上院は共和党が多数となる可能性が高く、議会からのTPA取得には苦労するだろう。そのうえで、USMCA(アメリカ・メキシコ・カナダ協定)同様、環境・労働分野等でのTPP協定「改善」交渉が求められ、気づけば中間選挙という状況も想定される。TPPはアメリカにとり経済的利益に加えて対中国での地経学的利益も大きい。日本もアメリカがTPPに復帰しやすい環境づくりに努める必要がある。
バイ・アメリカン強化、国境調整税導入か
バイデン政権はトランプ政権同様、アメリカの自国製品を優先して購入する政策であるバイ・アメリカンを重視、政府調達はすべてアメリカ製品に限定と表明している。これはWTOの政府調達ルールに反するが、選挙後バイデンチームはルール変更にも言及している。アメリカがバイ・アメリカンを強化すれば、日本や欧州にも政府調達を自国品に限定する動きが生じる。負の連鎖は、政府調達が割高・非効率になるのみならず、アメリカ企業の国際的なビジネス機会も減らす。日本はアメリカと十分な協議を行う必要があろう。
気候変動対策に関し、バイデン氏は、就任後すぐにパリ協定へ復帰すると表明。また、2035年までに電力部門の温暖化ガス排出をネットゼロとするとし、太陽光、風力に加え、原子力、CCS(炭素回収・貯留)にも言及。さらに技術中立性を強調しつつ、2050年までにアメリカ全体の排出をネットゼロとすることも表明している。気候変動対策のための4年間で2兆ドルという支出に関しては、共和党が上院多数の場合は規模縮小も見込まれるが、バイデン政権は、さまざまな政策を動員して気候変動対策を進める立場に立つ。
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