宇宙は大国間競争の最前線
9月23日、コロナ禍の起点となった湖北省武漢市で、「北斗衛星導航系統3号(北斗GNSS)」の応用大会が開催された。6月23日に最後の55基目の衛星が軌道に投入された北斗GNSSは、すでに120を超える国と地域で利用され、中国の衛星測位サービス産業の総生産高は3450億元 (約5兆2600億円)に達したとされる。
一方、アメリカでは5月末、SpaceX社による9年ぶりの有人宇宙飛行を視察したトランプ大統領が、「民間の比類ない創造性とスピードを利用し、アメリカは未知の領域に踏み込む。宇宙軍も創設した。アメリカが宇宙で他国に後れを取ることは、もう決してない」と宣言した。
日本は世界で4番目に人工衛星を打ち上げた宇宙のパイオニアだが、軍事利用を自ら制限し、1990年代以降は商業利用の拡大でも劣勢を強いられてきた。遅まきながら、2018年の防衛計画の大綱に宇宙・サイバー・電磁波の新領域における優位の獲得を最優先すると明記し、本年6月30日には、米中に伍して日本の宇宙パワーを強化する宇宙基本計画が閣議決定された。宇宙は、次世代経済発展の重要な市場として、同時に将来戦を優位に戦うための第4の戦闘領域として、大国間競争の最前線となっている。
衛星が提供する各種サービスはすでに日常生活に不可欠となっている。通信・気象、測位・航法等に加え、農業・防災・インフラ管理等の多様な分野で衛星データ利用が進み、将来のデジタル社会に宇宙利用は不可欠となろう。海外では、それを支える小型衛星・ロケット開発、衛星データ・インフラ整備のほか、資源探査や宇宙旅行などさまざまな分野において民間の宇宙ビジネスが急拡大し、アメリカ宇宙財団(Space Foundation)によれば、世界の宇宙産業市場は2019年には4238億ドル(約45兆円)に成長した。
だが、残念ながら日本の宇宙関連事業の同年の生産高は3431億円にとどまっており(日本航空宇宙工業会)、ドラスティックな競争戦略が必要だ。その際、各国の激しい競争によって表面化している新たな問題を考慮する必要がある。
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