日本が「デジタル敗戦」から脱するのに必要な策

国家サイバー・パワーの中核機能をつくれ

コロナ禍であぶりだされた日本の弱点を根本的に解消するチャンスでもある(写真:shimanto/PIXTA)
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。
※今回より3回にわたって、デジタル庁を巡る地経学を追っていく。

「デジタル敗戦」の現実

菅政権の目玉政策の1つがデジタル庁の設立だ。10万円給付の遅延や手書きでファックスを使うコロナ発生届など、新型コロナ危機で政府のデジタル活用の遅れが露呈した。

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光ファイバー網や携帯電話通信網などの通信インフラは良質であるにもかかわらず、利用者起点での利活用が進まなかった状況について、平井卓也デジタル改革相は幾度となく「デジタル敗戦」という強い言葉で語っている。

コロナ危機は、政府が過去に幾度も掲げながらも20年間遅々として進まなかった政府のデジタル戦略を一気に進める、今までにない好機になっている。外に目を向けると、世界はすでに「国家サイバー・パワー」を巡る競争を繰り広げている只中だ。日本が世界のサイバーという競争空間の中でも「敗戦」となるか、今その岐路に立っている。

地政学的な課題を解決するために経済を武器として捉える場合、先端技術を習得すること、また次世代の中心産業の国際基準を掌握することは大きな戦略の1つだ。サイバー空間は、そのような民間の力も総動員した国家間競争の主戦場の1つになっている。

過去を振り返れば、世界はつねに国家のパワー・バランスによって秩序を形成し、アルフレッド・マハンが帝国主義の時代の海軍力について提唱したシー・パワー、冷戦時代を規定した核戦力(ニュークリア・パワー)、冷戦後はジョセフ・ナイが提唱したソフト・パワーなど、時代を形作るパワーは変遷してきた。

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