データを生かせるか――世界はコロナで「実践編」に
前回『日本が「デジタル敗戦」から脱するのに必要な策』(2020年11月2日配信)に続いて、日本の「デジタル敗戦」を起点にデジタル庁の役割について考えていきたい。
2020年9月に発表されたスイスのIMDの「世界デジタル競争力ランキング」において日本は63カ国中、27位であった。内訳をみると、ブロードバンド利用者数やモバイルカバレッジなどインフラ面で1位を取得している一方で、ビッグデータ活用、デジタル人材のグローバル化や企業の変化の迅速性は調査対象国の中で最下位であった。
とりわけ、データの利活用ができないという評価は致命的である。国家のサイバー・パワーにおいて、守りの力はサイバー・セキュリティー能力であるが、今後のグローバル・パワーを形づくる付加価値・競争力の源泉は間違いなくデータだ。デジタル庁の設立でこの状況が打破できるか。日本の力が試される。
コロナ危機を通じて、世界はデータ活用の「実践編」へ一気に突入し、データに対する人々の理解は一段深化した。われわれは、中国の監視国家的な状況を横目で見て、プライバシーへの懸念を強めた一方で、データを使えることの意味を実感したのだ。
感染の震源地でもある中国の動きは早かった。中華人民共和国工業情報化部は、2020年1月早々に各省間のデータ共有を行える体制を構築し、人流データの解析によって濃厚接触者を特定し、消費電力データで隔離中の人の移動を把握、地下鉄や公共交通機関から入手した交通データを使用してウイルスの予測伝播シミュレーションを行った。医療分野でも中国の病院でいち早くCTスキャン画像のAI解析が活用されたことは有名だ。
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