日本が中国の影響工作に警戒せねばならない訳 嫌中感に頼らない耐性を確立することが重要だ

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「経済的つながり」が残ることを前提としつつ影響工作への耐性を高める工夫も重要となる(写真:3dmitry/iStock)
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

中国の影響工作の広がり

中国の影響工作(Influence Operation)に関心が高まっている。オーストラリアにおける中国の影響に関しては、クライブ・ハミルトン氏が2018年2月に『目に見えぬ侵略』(“Silent Invasion”)を執筆。ブックセミナーでワシントンDCに来た際には、約束していた出版社が中国の圧力で断りを入れてきた話を披露、オーストラリアにおける「侵略」の深刻さを語った。

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アメリカに関しては、2018年10月末に、フーバー研究所が『中国の影響とアメリカの国益―建設的警戒の促進―』(“Chinese Influence & American Interests ― Promoting Constructive Vigilance ―”)を発表。議会、メディアから教育、研究機関、シンクタンクまでアメリカ内で広範に中国の影響工作が浸透していると警鐘を鳴らした。

先月末(7月23日)、アメリカの戦略国際問題研究所(CSIS)が『日本における中国の影響』(China's Influence in Japan)という報告書を発表した。著者はニューヨークのカーネギー・カウンシル所属のデヴィン・スチュワート氏。

影響工作には、広報文化外交(public diplomacy)のような「正当な影響」(benign influence)と、隠密(covert)、威圧(coercive)、腐敗(corrupt)の3Cを特徴とする「不適切な影響」(malign influence)の2つがあるが、スチュワート氏はこの両方を分析の対象としている。

結論としては、中国との長い歴史的・文化的関係にもかかわらず、日本における中国の影響はほかの民主主義国に比べて限定的というもの。

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