米国が次に中国に課す「決定的な制裁」とは何か 米中戦争は短期と長期の2つの視点で考えよ
アメリカと中国の関係が一段と悪化している。香港国家安全維持法が施行され、香港の「一国二制度」が崩壊。アメリカは対抗措置として香港自治法を成立させたが、今度は互いに総領事館を1つずつ閉鎖させた。米中関係の悪化でマーケットはどうなるのか。今後の行方を、武者リサーチ代表の武者陵司氏に聞いた。
香港国家安全維持法は「白色テロ」
この間の流れは長期の本質的なトレンドと短期の展開とに分けて考えるべきであろう。まず長期、本質的トレンドは米中対立が決定的となり、いずれ中国経済が衰弱していくという流れだ。
米中の経済対立を「経済戦争」と表現したメディア、言論人は大勢いるが、正直なところ私は両国ともある程度の節度を持っていて、米中経済対立も、両国がある程度のところで妥協するのではないかと考えていた。
しかし、6月30日から「香港国家安全維持法」が施行されたことによって、状況は一変した。
香港は1997年にイギリスから中国に返還されたが、このとき「一国二制度」が導入され、中国のその他の地域には認められていない集会や表現の自由、それ以外の民主的権利など英領下における資本主義的な自由は返還後も50年間、維持されることになっていたはずだ。ところが、同法が施行されたことによって香港の高度な自治は消滅した。昨日まで自由にモノを言えていたのに、6月30日の午後11時をもってその自由が完全に剥奪されたのだ。
これは「白色テロ」といってもいい。白色テロとは為政者が反政府運動や革命運動に対して行う激しい弾圧を指す。
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