米国が次に中国に課す「決定的な制裁」とは何か 米中戦争は短期と長期の2つの視点で考えよ

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さらに、不動産、インフラ投資はほぼ前年水準を上回っており、経済のV字回復が視野に入ってきた。鉱工業生産は4月が前年比3.9%増、5月同4.4%増、6月も同4.8%増とすでに前年水準以上を回復している。とくに固定資産投資は1~4月13.68兆元(前年比-10.3%)、1~5月19.92兆元 (前年比-6.3%)となっており、ここから5月単月を計算すれば6.24兆元、前年比39.4%と急増。不動産投資とインフラ投資が主導していることがわかる。

「ハイテク投資戦争」で短期的には投資チャンスも

また前述のように、アキレス腱であるはずの経常収支は改善している。いち早く立ち直った供給力を武器に4~6月輸出はほぼ前年並みまで改善(4月前年比3.5%増、5月3.3%減、6月0.5%増)。一方で輸入の減少により、貿易黒字は増加している。加えて最大の赤字要因であった中国人の海外旅行が著減し、経常収支の黒字が膨れ上がっている。外貨準備高は2020年6月末3兆1123億ドルと緩やかに増加趨勢にある。ドル準備は強化されている。

香港ドルも、当面不安はない。シンガポールにおける海外預金の増加が報道されるなど、香港からの預金流出も観測されているが、香港の外貨準備高は約4400億ドルと、マネタリーベースの2倍に達しており、資金流出には耐えられる状況である。万一の場合、中国人民銀行の香港へのドル送金が行われよう。

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さらに、金融緩和と当局誘導の投資ブーム、人為的ともいえる株高が始まっている。香港国家安全維持法が資本流出や金融不安を引き起こすという懸念を払拭するための、「官製株高」とも考えられる。株式ブームの中核は、習近平政権が国運をかけて資本を集中させようとしている半導体である。

このように、短期的には中国の経済金融は堅調で、アメリカにとっては、中国に金融的制裁を科すべき時期に至っていない、と考えられる。とすれば、今はハイテク覇権を守り、中国を「振り切る土台」をつくることが大事である。

投資に当たっては、米中で半導体や5Gなど「ハイテク投資競争」の展開も予想される。長期的警戒とともに、短期的投資チャンスがあることにも目を配る必要がある。

鈴木 雅光 JOYnt 代表、金融ジャーナリスト

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すずき・まさみつ / Masamitsu Suzuki

1989年岡三証券入社後、公社債新聞社に転じ、投信業界を中心に取材。2004年独立。出版プロデュースやコンテンツ制作に関わる。著書に『投資信託の不都合な真実』、『「金利」がわかると経済の動きが読めてくる!』等。

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