米国が次に中国に課す「決定的な制裁」とは何か

米中戦争は短期と長期の2つの視点で考えよ

ただ、ハイテク分野の世界覇権を狙っている中国の弱点は、半導体分野にある。現状、中国の半導体国産化率は約15%と極めて低い。そのため中国は、この国産化率を2025年までに70%まで高めようとしているが、クオリティーの高い半導体を製造するためには、優れた半導体製造装置が必要になる。

そこでアメリカは、カギとなる半導体製造装置の中国向け輸出を禁じる姿勢だ。すでに世界最先端の露光装置を唯一生産しているオランダのASM社は対中輸出を停止した。アメリカの調査会社であるIC Insightsによると、2024年でも、中国の半導体国産化率は、21%に止まると予想されている。

アメリカはいよいよ「伝家の宝刀」を抜くのか

アメリカの対中制裁は恐らくファーウェイに対する制裁だけにとどまらない。今後、打ち出される制裁措置の中でも、劇薬といってもいいのが対中金融制裁だ。

米上下院は「香港自治法案」を全会一致で可決し、ドナルド・トランプ大統領も署名して成立した。この法律は香港の自治侵害に関与した中国当局者や彼らと取引のある金融機関に対して制裁を科すもので、資産凍結やビザ発給停止、金融機関との取引停止を可能にする。

これが実行されれば、中国へのドルの流通経路が遮断され、中国は金融危機に陥ることが起こりえる。アメリカが対中金融制裁を行うのはまだまだ先と考えていたが、「香港国家安全法」の施行によって、いよいよ伝家の宝刀に手をかけたといえる。

とはいえ、半年や1年という短期では、むしろ中国のプレゼンスが高まるという可能性が強くなっている。

その間は、しばし中国の攻勢が続く局面なのではないか。以下の4つは象徴的だ。①コロナ感染「鎮圧」に先行したことによる、世界で突出した経済成長、②感染国に対する援助支援による「抱き込み」、③経常収支悪化が大きく先延ばしされ、2018年に顕在化しそうになっていた外貨不安が一時的に解消、④実効支配(自ら紛争を作り出す周辺地域において)を一気に進める機会を与える、等である。

米中貿易戦争で、2018年から地盤沈下すると思われていた中国の経済プレゼンスは逆に高まった。金融面では経常収支の大幅改善と投資主導の国内成長維持・人為的資産価格押し上げによって、問題の顕在化は相当期間の間(少なくとも3年以上)は先送りできるだろう。

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