日本が中国の影響工作に警戒せねばならない訳 嫌中感に頼らない耐性を確立することが重要だ

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また、日本は貿易や直接投資を通じた中国との経済的結びつきが強く、経済的視点から見た「中国の影響」への脆弱性にも留意が必要である。

2019年の日本の貿易総額に占める中国の構成比は21.3%と第1位で、第2位のアメリカの15.4%を大きく上回る。対中貿易構成比の20.7%(2010年)から21.3%(2019年)への上昇は、対ASEAN構成比の14.6%(2010年)から15.0%(2019年)への上昇よりも高い伸びであった。

また、日本から中国への直接投資は、フローで見れば、2009年69億ドル、2010年73億ドル、2011年126憶ドル、直近の2019年は144憶ドルとむしろ増加してきている。中国の経済規模の拡大を考えれば自然だが、前述のとおり2010年以降の日本の中国に対する親近感が低位にとどまることを考えれば、この「国民世論」と「経済的つながり」の乖離(デカップル)は興味深い。

「経済的つながり」は中国に影響工作の機会を与える。例えば、香港国家安全維持法に対するドイツ政府の反応が慎重な背景には、ドイツの自動車業界にとり中国が最重要市場であることが関係しているとみる識者は多い。日本にとっても日本企業のビジネス機会を考えれば、中国との経済的なつながりを断ち切ることは容易ではなく、また望ましくもない。

自立的な政治・外交判断を制約するリスクも

さらに、「経済的つながり」には戦争抑止というプラスの効果があるとの指摘も以前よりある(ノーマン・エンジェル)。しかし、同時に「経済的つながり」の深さが、理念や価値観に基づく自立的な政治・外交判断を制約するリスクがある点には、つねに自覚的である必要があろう。

コロナウイルスをきっかけに、中国への依存度が高い日本のサプライ・チェーンに関して見直しが必要ではないかとの議論が盛んになった。

日本政府も2020年度補正予算で、中国からと限定はしていないものの、生産拠点が集中する国からの国内回帰や第3国移転を支援するために2435億円を計上した。医療関連品や重要物資など一定の分野で中国からの立地の移転が見込まれるが、日本の製造業全体が中国市場から撤退するという状況は想像しがたい。

とくに、中国市場を狙うために中国に工場を設立している場合には、こうした工場の多くが中国の外に移転する状況とはならないだろう。したがって、「経済的つながり」が残ることを前提としつつ影響工作への耐性を高める工夫が重要となる。

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