歴史的転換点となるポンペオ国務長官演説
2020年7月23日のポンペオ国務長官の演説は、よりいっそう対中批判の性格を強める内容となった。習近平国家主席を名指しで批判すると同時に、中国共産党体制そのものを批判し、従来にない激しい対中批判となった。また、カリフォルニアのニクソン大統領図書館という場所を選んで演説を行うことにより、1971年のニクソン政権におけるキッシンジャー補佐官訪中以来続いてきた、これまでの対中関与政策を大きく修正するものとして報道された。
その口火を切ったのが、2020年5月4日にマット・ポッティンジャー国家安全保障担当副補佐官のヴァージニア大学で行った演説である。「5月4日」とは、101年前のパリ講和会議後の、日本の領土的野心に対する中国国内のナショナリズムの勃興とそれに基づく反帝国主義的な「五・四運動」が起こった日であることが象徴的である。ポッティンジャー自ら、その日の重要性について演説の中で触れている。
そのような反帝国主義運動、民主化運動が現在の中国にも継承されていることに触れながらも、他方でそのような運動が約1世紀にわたって、実を結ぶことなく、そのような運動を抑圧する政権とこれまでアメリカ政府が協力してきたことを冷静に概観し、そのようなアメリカの姿勢を変える必要を指摘する。
このようにして、米中関係の構造的な対立の熾烈化を理解するためには、より長い時間軸の中に米中対立の現状を位置づけることが重要となる。というのも、現在われわれが見ている米中関係の構造的な変化は、単に1971年のキッシンジャー補佐官訪中以来の関与政策が転換点を迎えているという意味にとどまらないからだ。すなわち過去1世紀におよぶアメリカのアジア政策が、根本的に軌道修正される可能性さえもあるのだ。それはどういうことだろうか。
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