AIスタートアップの警鐘
2019年12月31日、WHO(世界保健機関)が武漢事務所から原因不明の肺炎に関する報告を受領するのとほぼ同時に、カナダの小さなスタートアップBlue Dotは、検知した武漢の市場における肺炎のクラスター発生情報から、クライアントに感染流行の警告を発した。WHOが第一報の感染流行通知(DONS)を正式発表する5日前のことである。
Blue Dotは、感染症医師カーン氏(Dr. Kamran Khan)が2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行の経験を機に「政府機関の公的発表を待つだけでは遅い」と考え6年前に創業。獣医・医師・疫学者・エンジニア・データサイエンティスト・ソフトウェア開発者など40名程度のチームを抱え、政府・企業・公衆衛生関係者といったクライアントに分析結果を提供する。
AIを活用した独自のリスク・ソフトウェアは、1日あたり65カ国語10万件の公文書・メディアソースを分析して感染症発生を検知。また、検知した感染症が世界にどう拡大しインパクトを与えるかを、10億単位のフライト旅程・千万単位の携帯端末、リアルタイム気候条件や医療キャパシティーや動物人口・昆虫の数・人口動態などから予測する。
今回のコロナ禍における世界最初の新型コロナウイルス関係科学論文は、Blue Dotによる分析結果であった。これは、その後に全世界で起こる、新型コロナウイルス感染への対応競争において、AIをはじめとした第4次産業革命時代のテクノロジーの活用が、各国の対応の勝敗を決する重要なファクターに躍り出たことを象徴する出来事であった。
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