日米同盟の新常態を構想する必要がある
安保条約改定60周年の節目に、日米同盟はコロナ危機という「有事」に直面している。米中が国民感情を巻き込んだ新冷戦とも言うべき関係に変容する中、ポストコロナにおける日米同盟の課題が浮き彫りになってきた。
地政学的な対峙から地経学的対立へと拡大する米中の争点には、今回のコロナ危機と同様、日米同盟だけでは日本国民の命と生活を守ることが困難な分野が多い。中国の軍事力には日米同盟による抑止力が不可欠だが、情報操作や非軍事的手段には日本独自の対処力が求められる。日米同盟は必要条件ではあるが十分条件ではないことを理解しつつ、日米同盟の新常態を構想する必要がある。
アメリカは、2017年に公表された「国家安全保障戦略」の文書の中で中国を脅威の主対象に定め、コロナ危機以前から見られた中国のいわゆる「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」戦略に対抗する態勢にシフトしつつあった。だが、コロナ危機はアメリカ軍に潜んでいた弱域を明らかにし、その軍事態勢の移行にも影響すると考えられる。
まず、軍事力の最も重要な要素である将兵が感染に弱く、この微小な敵によって最強のアメリカ軍の行動が大きく制限されることが証明された。ポストコロナの世界における軍事態勢では、バイオテロやCBRN兵器(化学、生物、放射性物質、核)への対応を「新常態」とせざるをえないであろう。無人化や遠隔操作による脆弱性の克服も優先課題となる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら