コロナで最も変わった国はフランスではないか

あんなに個人の自由を重んじる国だったのに

新型コロナウイルスの感染拡大でフランス人の生活は大きく変わってしまった(写真:REUTERS/Gonzalo Fuentes)

第1次および2次世界大戦の開戦時、フランス政府は壊滅状態に陥ったものの、最終的には戦勝国となった。これは、フランス政府がお粗末な初動を経て今では新型コロナウイルスとの戦いにおいて他国にリードしている、と願うフランスのジャーナリストたちがこのところよく使う比喩だ。

フランスのメディアプロダクション会社Hikariの代表を務めるアンソニー・デュフォ氏は、「コロナという疫病に対するエマニュエル・マクロン大統領の最初の反応は人種差別主義と傲慢が混じったものだった。アジアで14年間暮らした後、4年前にフランスに帰国したことを後悔したのは今回が初めてだ。中国政府ですらコロナウイルスへの対応においてミスがあったと認めたのだ。フランスではなくてね」と不満をもらす。

180度の政策転換を迫られている

フランス政府の当初の反応は、コロナウイルスに効果的に対処してきたアジア諸国を口汚く非難することだった。人の移動を制限したり、市民を追跡するシンガポールや韓国、台湾は「Liberty-cide(自由を殺すこと)」を行っていると主張し、自由を重んじるフランスではこういった過激な対策はとれないとした。マスク着用はウィルスの感染拡大防止にはならず、韓国の徹底的なテスト実施方針は無意味だと切り捨てた。

マクロン大統領曰く「ウィルスにパスポートがあるわけではない」ことから、国境のコントロールは無駄だと断言した。

フランス政府はその後、自らの発言の1つひとつを否定するかのように痛みを伴う180度の政策転換を強いられている。北東アジア諸国を息のつまるような独裁主義と形容したフランスは、これらの国のどこよりも踏み込んだ手段をとることになった。国内全土での外出禁止だ。

3月17日以来、フランス市民は外出できない。これは新たに通知が出るまで続く。外出できるのは食料品の買い出し、医師による受診、若干のエクササイズ(近所のみ)、犬の散歩、仕事(在宅勤務が絶対にできない人のみ)というごく限られた場合だけだ。

外出時には自宅でダウンロードできるフォームに記入し、呼び止められた場合は警察にそれを提示しなければならない。軽率に外出する人には135ユーロ(1万6000円)の罰金が科せられる。クリストフ・カスタネル内務大臣は4月1日、「外出禁止が始まってから580万回の検問が実施され、35万9000件のレポートが作成された」と語っている。

次ページ「マスクは意味がない」としていたのに
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 憧れから一歩前へ! キャンピングカーのある日常
  • 映画界のキーパーソンに直撃
  • ソロモンの時代―結婚しない人々の実像―
  • iPhoneの裏技
トレンドライブラリーAD
人気の動画
京セラのガラパゴススマホ「トルク」がたどり着いた境地
京セラのガラパゴススマホ「トルク」がたどり着いた境地
「人のために働く職業ほど低賃金」な根深い理由
「人のために働く職業ほど低賃金」な根深い理由
「雑談で笑いを取れない人」が知らない基本原則
「雑談で笑いを取れない人」が知らない基本原則
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
激動相場に勝つ!<br>株の道場

6月18日発売の『会社四季報』夏号が予想する今期業績は増収増益。利益回復に支えられる株価が上値を追う展開になるか注目です。本特集で株価が動くポイントを『会社四季報』の元編集長が解説。銘柄選びの方法を示します。

東洋経済education×ICT