コロナで最も変わった国はフランスではないか あんなに個人の自由を重んじる国だったのに

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国の結束という名のもと、大統領はいま、果敢にも自身の行動を批判する人々を「無責任」と糾弾している。もちろん言論の自由を攻撃する法律はどこにもないのだが、フランスのメディアは静まり返っている。

一方、フランス人ビジネスマンたちは、企業救済策は疫病そのものの対策よりも格段にいいと感じている。

緊急じゃない緊急事態に突入

フランスと日本で複数のレストランを運営するLe Bretagn創業者でCEOのベルトラン・ラーシェ氏は、「一時的な事情によって従業員を休職させなければならないことを労働省に示すことができれば、実質賃金の84%が返金される。賃金は6927ユーロ、またはフランスの最低賃金の4.5倍を超えてはらない。これは大きな財政努力だ」と話す。

そして「この仕組みのおかげで従業員を解雇せずに済み、従業員も失業を避けられる。会社も働き手を維持できる。レストラン業界では人材が重要。従業員なしではビジネスが成り立たない。フランス政府はまた、企業のために5年間の融資制度を設けた。これは企業が銀行から最大で自社の四半期売上高を初年度は0%、以降の4年間は1%の金利で借り入れられるという制度だ」と続ける。

また、この数週間でフランス人の電子マネー利用率が増えた。まだ幼かった頃、母はよく私に「お金はいろんな人が触っていて汚いでしょ」と言っていたが、現金を介した感染への恐怖が、電子マネーの利用が進む理由の1つになっている。フランスで早くからクレジットカードが普及したのも、この国には泥棒が多かったからだった。

日本がここ2週間のフランスのような状況を避けられることを願っている。多くの人々がもがきながら死んでいく。感染の恐れがあることから家族は見舞いにも行けず、電話でしか最後の別れができない。お葬式で死を悼むこともできない。

安倍晋三首相は4月7日、緊急事態宣言ついに発効した。だが、休業補償が不確か中、一部の飲食店などは今後も営業を継続する見通しと、曖昧な状態にある。日本はまさに、緊急ではない、緊急事態に突入したのである。

レジス・アルノー 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員

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Régis Arnaud

ジャーナリスト。フランスの日刊紙ル・フィガロ、週刊経済誌『シャランジュ』の東京特派員、日仏語ビジネス誌『フランス・ジャポン・エコー』の編集長を務めるほか、阿波踊りパリのプロデュースも手掛ける。小説『Tokyo c’est fini』(1996年)の著者。近著に『誰も知らないカルロス・ゴーンの真実』(2020年)がある。

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