コロナウイルスによる感染が深刻な状況となっている。これだけ広範囲に感染が拡大し、経済活動が抑制されるというのは、戦後社会としては初めての経験であり、先の状況を予測することは極めて難しい。このようなときは一度、冷静になって歴史を振り返って見るという姿勢も必要だろう。
近代以降、大規模な感染によって全世界で死者が出たケースとしては、1918年から1920年にかけて大流行したスペイン風邪がよく知られている。本稿では、スペイン風邪の感染拡大とGDP(国内総生産)や株価の推移などについて考察していく。
筆者はかつて、過去130年の経済や株価の推移について分析した『お金は「歴史」で儲けなさい』という書籍を執筆しているが、こうした歴史分析を行うと、必ずと言っていいほど「当時と今を比較しても意味がない」「状況が違いすぎる」といった批判の声が出てくる。
過去と現在で状況が異なるのは当然のことであり、もし歴史をさかのぼることについて無意味であると考えるのなら、時間の無駄になるので、本稿を読んでいただく必要はまったくない。
しかしながら、著名な投資家や実業家の中には、歴史的な分析を実践している人が少なくない。経済というものが人間の活動の集大成である以上、同じようなことを繰り返す可能性は高く、歴史を知ることは人間を知ることにつながるからである。こうした歴史が持つ価値について理解のある方のみ、読み進めていただければと思う。
スペイン風邪が流行した当時はバブル経済の真っ最中
スペイン風邪は、1918年から1920年にかけて全世界で流行したインフルエンザである。当時、日本の内政を担当していた内務省の調査によると、国内では3回のピークがあり、第1回目のピーク(1918年8月~1919年7月)には患者数が2100万人以上、死亡者は26万人に達したとされる。
2回目のピーク(1919年8月~1920年7月)は患者数が約241万人と大幅に減り、死亡者数も12万8000人と半減した。さらに3回目のピーク(1920年8月~1921年7月)になると、患者数は22万4000人、死亡者数は3700人となり、その後、感染は終息した。諸外国もほぼ同じで、1918年の秋に大流行となり、1919年に再度、拡大したのち終息を迎えている。
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